第4話 んっ…

「んっ…ぁっ……」

彼女に水を口移しで飲ませてもらっているのだが、水を移して貰う度に彼女から少し卑猥ひわいな声がにじみ出る。

口移しを頼んだ挙句、こんな事を言うのもなんなのだが、いけないことをしているようで少し罪悪感すら覚える。目を覚ますと名前も知らない彼女に看病してもらい、それに加え、口移しで水を飲ませてもらうなど、まるでドラマの主人公にでもなったかのような錯覚さっかくさえも覚える。


「ぷはっ…はぁ…はぁ…その、もう大丈夫…ですか?」

口に含んでいた水を全部移すと、彼女は顔を真っ赤に染め、先程までパッチリとしていた澄んだ瞳は、ほんのりとうるんでいて、とろんととろけている。

そんな彼女の表情が妙に色っぽく見え気恥ずかしくなりぱっと顔を逸らす。

心臓はありえないほど脈打ち、顔は茹でダコの様に熱く、赤くなっている。

彼女の表情や仕草ひとつひとつがとても可愛らしく、別次元の人間なのかと疑ってしまう。

ちらりと横目に彼女を見ると、苦しかったのか、肩で「はぁ…はぁ…」と息をしており、その仕草が妙にいやらしく見え、生唾をゴクリ…と飲み込んだ。

視線に気づいたのか彼女と目が合うと彼女は一気に顔を真っ赤にし目線を落としたと思ったら、何かを思い出したのか、顔を上げて口を開いた。


「あっ、あのっ!」

気恥ずかしさからか、声が裏返っている。

「あ、あなたが起きたらお父さ…お医者様を呼ぶように言われているので、よ、呼んできますね!!!」

そう言うな否やきびすを返し、逃げるようにして部屋から出て行った。

颯爽さっそうと部屋を出ていく彼女に呆気あっけに取られるも、机の上にあるペットボトルに目がいくと、彼女の唇の感触を思い出してしまい、熱がぶり返したかのように一気に顔が熱くなっていくのが分かった。

怪我のせいなのか、口移しのせいなのかこの際どちらでも良く、落ち着くのにしばらく時間がかかった。

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