第88話 気に食わない

 気に食わない。


 あそこは……俺らの領分だった。


 気に食わない。


 長老らの養護があるだなんて。


 ヒトだぞ?


 人間だぞ?


 何も出来ない……短命の愚かな存在。


 売り買いしているのは……まだ許せる。


 俺らの欲しいものがあるから。


 なのに……あそこは!!


 俺らが壊してしまった……あの土地で。


『店』を開く……だと?


 しかも……露店の奴らより繁盛していやがる。


 物凄く……気に食わない!!



「兄貴、あそこぶっ潰してやりましょうぜ!!」



 舎弟も言い出したので……俺は頷いた。



「長老の怒りを買うかもしれねぇが……気に食わねぇからな? やっちまおうぜ!! 野郎ども!!」


「「「「おお!!」」」」



 長老どもがなんだってんだ。


 ヒトの出入りを許すだけでなく……住まわせてしまうのは気に食わない!!


 食うか食われるか……んなもん、当然俺ら『アヤカシ』の方が確実に食う方だ!!


 と言うのも。



(……めちゃくちゃ美味そうな匂い漂わせやがって!!)



 これじゃ、狩りで魔物を喰らうことが出来ねぇじゃねぇか!?

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