第72話 うなぎぽいので蒲焼き①

 ただ……一人で捌くのは大変なので、男性陣にも手伝ってもらおう!



「……こんなことする意味あるぅ?」


「皮も食べられるからです」


「……本当か?」



 クレハには、運搬と泥抜きをお願いした後に……岸辺にニョロギアを置いてもらい、彼女には休憩タイムを。


 大きな敷布の上で、私を含める三人でニョロギアを捌いているのだ。まずは、皮の臭み取りのために……すーっと表面の滑りを包丁などで擦り取る作業。これが地味に大事なんだよね? 


 穴子と似てて、新鮮なものほど白く取れていく……これだけで、美味しい仕上がりがぐんと変わっていく、はず。


 あとは、血に気をつけて捌こうと思ったが……普通のうなぎとは違い、このニョロギアには血に毒は無いとスインドさん談。


 なので、気にせずどんどん捌いていくのだ! 骨取りはちょっと大変だったけど……タラのような肉厚な身がとっても綺麗だった。



「わぁ! 蒲焼きにしたら絶対美味しそう!!」


「「「かばやき??」」」


「えっと……サイシをメインに使う、甘辛いソースを使って焼く調理法です。簡単に出来るソースもあるにはあるんだけど」


「「「けど??」」」


「繰り返し漬け込むことで、味の深みが増すソースの方が絶対美味しいんですよね?」



 師匠達が……先代以前より受け継いでいた、大事な蒲焼きのタレ。


 現代日本じゃ、市販で売ってるのを家庭で使うのもあるけど……やっぱり、専門店とかで提供されるのとは味も風味も当然違う。


 だから……食べたいと顔に出てる三人には、申し訳ないが……と言いかけたら。



「美味いん!? あちきも食えるん!?」


「い、いや……クレハ? 私見習いだから、そこまでは」


「せやかて、このニョロギアが美味くなるんやろ!? あちき食いたい!!」


「……待って待って。最低店に戻ってからにしようよ。調味料ないと無理だから……道具も」


「……あーい」



 結局……クレハの勢いに根負けしてしまい。予定していた天ぷらもだけど、フライも……蒲焼きの方が魅力的に思ったメンバーがほとんどなので……そっちが優先となってしまった。


 捌いた身はクレハとザックさんが手分けして、魔法使い収納に入れてくれた。移動は……早くクレハが食べたいからと問答無用でジェットコースター移動。


 男性二人は、また酔いかけたけど……何とか持ちこたえてくれたわ。



「……さて」



 休むザックさん以外は、厨房に入ってくれることになったので……まずは、蒲焼きのタレ作りだ。個人的に食べたい時に一人暮らしの家で作った……なんちゃってバージョンだけど。



「……これだけでいいのか?」



 スインドさんに用意してもらったのは、酒、みりん、砂糖に醤油。


 これだけで……まあ、市販品の味くらいなら作れるのです。



「酒の調味料系は……合わせて、小鍋で煮立たせます」



 沸騰させたら……残りの材料を入れ、ごく弱火で煮ればまあ出来上がり。


 室内に充満していく……甘辛い香りに、クレハはふにゃんとした笑顔になったわ。



「にゃ〜! ええ匂いやわ〜〜!!」


「これを使って……蒲焼き作るんだけど」



 いつもの竹串ぽいのじゃ、身の重さで割れるし……ここは、スインドさんのお店で購入出来たステンレス製ぽい串の出番だ!


 炭の上で焼くので、ここはスインドさんにも手伝っていただく。


 クレハはタレの香りで……半分使い物にならない状態なので仕方がない。

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