幕間
――
窓のない広間の床全体に描かれた、複雑な紋様。
四隅の祭壇では、青、白、赤、黒の四色の炎が揺らめき、天井からは幾つもの呪符と金属細工で飾られた紐が無数に垂れ下がっている。
そして広間の中央には、水盆を
儀式を執り行っているのは、衛将軍の娘、
「霊波探索範囲を二割拡大……北東を中心に解析……」
水盆に手をかざし、絶え間なく霊力を送り込むことで、表面に浮かぶ波紋の形を刻々と切り替えてく。
静謐な儀式を続けること
波紋と輝きが局所的に激しさを増していき、水盆から水が溢れんばかりに震え始める。
「……見つけた……」
風蘭は霊力の送り込みを中断し、儀式に用いた設備もそのままに、早足で広間を後にした。
向かった先は屋敷の中庭。
そこでは家主たる衛将軍が、老齢とは思えない頑健な肉体を露わにして、独り剣の鍛錬に励んでいた。
「父上。黎駿太子の居場所を確定しました。
「よくやった! これでようやく殿下に現状をお伝えできる!」
「必要以上に時間を頂いてしまって、申し訳ありません。王宮の儀式装置があれば、数日は短縮できたと思うのですが……」
「充分だ。しかし、
衛将軍は汗を拭いながら眉根を寄せた。
「一体どういうことだ?
「私もその点が気に掛かりました。詳細は不明ですが、殿下の近辺に膨大な霊力の反応があります。無関係ではないかもしれません」
「人間か?」
「不明です。しかし生物としては規格外が過ぎますから、何かしらの法具の類ということも考えられます」
「ふぅむ……現在の居場所以外は一切分からんも同然だが、少なくとも
今の二人には知る由もないことだが、規格外の霊力反応の正体は、正真正銘の霊獣たる雪那である。
追放処分を受けて早々に本物の龍と出会い、協力関係を結んで旅を共にし、時にはその背に乗って空を飛んだ――黎駿がこのような道を辿っているなど、一体誰が予想できるというのか。
「残念だが、これ以上は殿下に直接お訊ねするより他にあるまい。風蘭よ、引き続き頼めるか。黎駿殿下にこの国の……そして陛下の現状をお伝えするのだ」
「お任せください、父上。私の法術士としての天命、大いに発揮させていただきます」
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