第129話 ゼウスVSアマテラス
「この先ですね」
アマテラスは『遺跡都市』で起こる乱闘騒ぎを離れ、都市の外れにある森林の前で足を止めた。
スッと正面に視線を集中すると、遥か遠くを見通す『千里眼』にて『星の探索者』のベースキャンプを発見。そこで、クランメンバーと友好関係を深めている王龍天の姿を確認する。
「見つけました。まずは一度、交渉をしてみます。ヤマト、私が許可を出すまで刀を抜いてはダメですよ?」
アマテラスは実に上機嫌だった。
【原始の木】が作り上げたクラン『星の探索者』。
ローハン様は勿論、クロエ様も相当な実力者で、二人の語った物語は得難いモノだった。これなら他のメンバーにも大いに期待出来る。
「【水面剣士】とも戦うか」
「当然です。ですが、命までは奪いませんよ。死者が語る“物語”は成長しませんから」
これから起こる事は全く予想がつかない。本当に――
「『宵宮』を発って良かったです」
人の意識を超える遥か上空――成層圏にて生成されていた雷の槍は『雷魔法』の最終形。かつての着弾地点は未だに落雷の止まることの無い海域となる程に常識を超えた威力を持つ。
『ゼウスの雷霆』と呼称される一撃が精密な経路にて二人へ落下する。
本来の所持者によって造られた『雷霆』は瞬きの間も無い速度でアマテラスとヤマトへ直撃した。
『ゼウスの雷霆』が一帯ごとヤマトとアマテラスを吹き飛ばす刹那の瞬間、
「――――」
キィン。と、何かにぶつかって『ゼウスの雷霆』は弾かれ、V字の軌道にて斜め上空へ飛んで行く。
本来はアマテラスとヤマトが受けるハズだった轟音と大気の震えが上空にて炸裂。枝分かれした雷が無数の手のように拡散した。
「『雷霆』でしたか。私たちは以外では死んでましたね」
『ゼウスの雷霆』が後1メートルまで迫っていたにも関わらず、アマテラスとヤマトは特に気にした様子もない。
きっと、私とヤマト以外なら別の手段で足止めを狙ったのでしょう。しかし、それでも手心を加えて来るなど……ゼウス、貴女は優し過ぎる。
本気で『雷霆』を放つなら1本ではなく、無数に降らせるべきだ。
「ヤマト。貴方は歩いて来なさい」
「直線上に居る」
ヤマトのその言葉を聞くと、アマテラスは自らの姿を熱で歪む空気のように揺れ、消失を始める。
「『
「流石ね、ヤマト」
ゼウスはベースキャンプを少し離れた森の中に潜伏し『雷霆』を完璧に『反射』したヤマトを素直に称賛していた。
彼の原子知覚の範囲が上がってる。前は身体にほぼ密着しないと『反射』は出来なかったのに。
「成長するのは人の特権ね」
「それは私も含まれていますか?」
ゼウスの背後に射し込む木漏れ日から形を成したアマテラスが炎と化した腕を構えていた。
「『火翔』」
「わっ!?」
振り抜かれたアマテラスの腕をゼウスは伏せるように飛んで回避。その腕から離れた『火翔』は直線上の木々を焼き貫きながら飛んで行く。
ゼウスは小柄な身体ゆえに至近距離でも髪の毛が少し焦げた程度で何とかなった。
「ちょっと焦げちゃったわ」
「ちょっとでは済みませんよ?」
倒れたゼウスが起き上がる前にアマテラスは追撃を行う。
一滴を落とした様な“火”が明滅しながら天より落ちてくる――
「『終焉の火』」
「『
ゼウスはアマテラスの非常理な『炎魔法』の連続に、抵抗する事はせず同じ『炎魔法』で対抗。“一滴の火”が一帯を抉るように炸裂する前に、別の炎で覆うと、優しく受け止める様に眼前に浮かせた。
「受け止めますか。先代を焼き尽くした“火”を」
「ええ。受け止めるわ。ここには――」
アマテラスは再度『火翔』を放とうとし、ゼウスは『終焉の火』をパンッと閉じる様に消失させると膨大な魔力を得る。
「
アマテラスの攻撃は突き出る様に出現した『土壁』によって阻害される。
横へかわして放とうと移動するが、更に壁になるように現れた『土壁』に阻まれる。
「『陽炎』――」
移動しようとした瞬間、更に四方を『土壁』に囲まれ、開いている上空も蓋をする様に閉じられた。
「『陽炎』は熱から熱へ移動する精霊化状態で使える特殊な魔法。アマテラス、貴女ほどの使い手なら木漏れ日の熱にも移動が可能だと解っていたわ」
『それでは、最初から私が単独で来ると?』
「ええ。例え、誰が一緒でも貴女は先行してくると思っていたのよ」
だって今の貴女は
「未知の世界に対してワクワクする気持ちは
『これが世界に身を置いた経験の差ですか……それでは私は――』
その時、ゼウスの背後から『アマテラスの火翔』が襲いかかって来ていた。
『
ヤマトが最初の『火翔』を『反射』したのね。回避……いや、ダメ。経路にはベースキャンプが――
ゼウスは受け止める選択を取る。
『アマテラスの火翔』を『焔包み』で受け止めると、そのまま覆う様に無力化。しかし、その手間をかけたせいで、
「【千年公】ゼウス・オリン」
ヤマトの間合いに入るまでの接近を許してしまっていた。
「手合わせ願おう」
「ちょっとちょっと……」
そして、更にその戦いの気配に紛れてを同じく間合いに入った“眷属”が居た。
「戦るならさぁ……海の上とか砂漠とか……人の少ない所で戦ろうぜ……」
場に現れたローハンは、勘弁してよ……と言わんばかりにも、何とか場を仲裁するべく、げんなりしながら現れた。
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