第42話 火から炎へ
正面から向かってくる複数の『
レイモンドが同じように拘束された事を見ていたカイルはその場で軽く跳んで、ソレをかわした。
「――――」
その浮いた所に『
宙に浮いたまま、カイルは上半身と腕だけで『
「あまり、当てにしない方が良いよ」
追い付いたレイモンドが、カイルに一番近い『
レイモンドのおかげで着地の間が取れたカイルは、切り返す様に彼に木剣を向けている『
「当てにして動いてるんだ。レイモンドも俺を当てにして良いぜ!」
カイルの言葉にレイモンドは笑う。
その二人に『
「『火柱』」
地面から噴き出す様な四本の炎――ローハンの『炎魔法』で焼き付くされた。
「おっさん、遅いぜ!」
「『炎魔法』は使っても良いんですか?」
その二人にローハンも並ぶ。
「良いコンビネーションだ」
「クラン全体で探索する時は、二人で前線張るもんな!」
「大概は僕が尻拭いしてるけどね……」
こんな時でもいつもの様子で喋る若人二人の様子にローハンは、フッ、と笑う。
その時、“水の刃”が飛んできた。カイルとレイモンドは左右に避けるが、ローハンは腕に熱を宿し、握るように受け止める。
蒸発し、形を維持できなくなった“水の刃”は弾けるように四散した。
「…………」
ローハンは『
「おっさん?」
「ローハンさん?」
ローハンは『人樹』に標的を分散させる為に『炎魔法』の使用は極力控える様に二人には厳守していた。しかし、その禁をローハン自ら破ったのだ。
「『水魔法』を使う『
「じゃあ、最初の作戦通り、全員で突破だな!」
「次は剣線にも気をつけないといけませんね」
「いや、お前らは突破したら後ろは振り返るな」
そう言って、ローハンは上着を脱ぎ捨てると二人よりも前に出る。
「『
何かが変わった。
そう感じさせる空気がローハンから漂い出る。それを真っ先に感じた
「遠慮なく行くぜ!」
「後ろはお願いします」
ローハンを追い抜き、駆けた。正面から目指す。あの『巨大人樹』を無力化して、
「
当然、『人樹』はカイルとレイモンドの接近を阻止する。
水魔法を使う『
「『アマテラスの火翔』」
“水の刃”が放たれる前に熱風が『
その時、土を掘り返す程の規模で根が飛び出した。根は『水属性』が付与され、土が泥になって熱風を受け止める。
「止まらねぇぞ。なにせ星の一撃だ」
熱風は根と泥を貫く。『巨体人樹』は更に自らの幹に水魔法を這わした。
『
水が蒸発する音が響き、水蒸気で『巨体人樹』の姿が隠れた。
「うわ、決まったんじゃね?」
「……」
カイルは、スゲー、と水蒸気に目を覆うが、レイモンドの懸念は別にある。
シャドウゴースト。ソレを喚ぶ可能性が充分にある攻撃だった。
“キャハハ――”
不気味な嗤い声。姿は見えないが相当近い。水蒸気がゆっくり晴れると、『巨体人樹』は健在だった。しかし、『上昇水流』が薄かった枝や葉は焼け落ち、表層には焦げ跡が残っている。
「――――」
『
シャドウゴーストはギリギリ出なかった。
『アマテラスの火翔』の出力は本来の10%以下。それ以上はカイルとレイモンドが耐えられなかっただろう。
「お前は家族に剣を向けるな」
伝わるかわからないが、ローハンは向かってくる『
『枝人』とはいえ、カイルとレイモンドに向けられる能力はクロエのモノだ。
アイツは、自分の力を家族に向ける事を望まない。それでも誰かが受け止める必要があるのなら、ソレは『星の探索者』を去ったオレの役目だ。それに――
ローハンは笑う。
その気配を『人樹』は絶対に無視出来なかった。
最初は三人とも横並びの脅威だった。しかし、ローハンは、レイモンドの先駆けで少し変わり、カイルの動きで完全に変わった。
小さな火から炎へと変わる様に一気にその存在を燃え上がらせたのである。
「さすがにこの数の『
必要なら……オレが犠牲になるつもりだった。『シャドウゴースト』を出してでもクロエを助け出す。しかし……その必要はなかった。
「この場にはオレ以外に『
カイルとレイモンドはこちらを振り向かない。だからこの選択が取れるのだ。
「二人を巻き込まずに『シャドウゴースト』も出さずに、全部のヘイトを引き付けるにはコレが最適だな」
漆黒がローハンを覆い、その顔は黒く塗り潰される。
出し惜しみはしない主義だ。いつもならクランマスターの采配でコレを使う必要がない相方が組まれるのだが、今回ばかりは使う必要がある。
本当に久しぶりだ――
【
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