第13話 証拠写真

それから1ヶ月過ぎた、ある日の放課後。



「先生って…嘘つきですね」

「えっ?」



パサッ


振り向くと同時に紫尾川さんが何枚かの写真を机に放り出すように置いた。



「これ…裕斗君と菜々子先生ですよね?どうやら同居しているらしいじゃないですか?これでも “嘘だ。”“違う” って通しますか?今なら許してあげますよ。でも…それでも隠し通すって言うなら…こちらにも考えがありますよ」



「………………」



「すごーーい!今の世の中、進んでるから。これ!合成でしょう?」


「…これでも隠し通すんですか?」


「同居してるとしたら、それはそれで事情がある。何かあるとか、そういうの一切無いわよ」


「じゃあ認めるんですね?」


「認めるとか認めないとか…そんなつもりは…第一、これが本当なら問題でしょう?」


「本当そうですよね?そこが不思議なんですよね?だって、明らかに出入りしているのは事実ですから。ねえ、先生、これ公表されたくなければ、裕斗君に近付かないで下さいね?」


「えっ?」


「まあ…近付く、近付かないにしろ、一緒に住んでたら無理な話ですよね? 一層の事、公表した方が良いんでしょうか?生徒と同居…。あっ!そうだ!先生美人だし~…この際、裕斗君に近付かないように誰か紹介しましょうか?」


「大丈夫です!近付かないから安心して!どうぞご勝手に!それからこの写真は預かっておきます!というより没収します」




私は教室を後に出た。




「本っ当っ!うまく言い逃れてるんだから!マジムカつく!だけど、そううまくいかせないんだからっ!写真は預かられた所で、どうって事ないし!」





✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕



「写真…一体誰が…?…彼女…かな?」

「菜々子先生」




ビクッ

背後から声をかけられ驚き肩が強張る。


振り返る視線の先には、結岐先生の姿があった。



「結岐先生」

「どうかされましたか?」

「えっ?」



「あれ?この写真……えっ!?誰かに撮られたんですか!?もしくはバレたとか?」

「あっ!いや…えっと…」

「生徒ですか?何か言われたんですか?脅されたとか?」

「いいえ…大丈夫です。ご心配なさらないで下さい」


「…菜々子先生…大丈夫ですよ。私は知っていますから先生の味方です。誰に言われたんですか?」


「…それは…でも、本当に大丈夫です」

「菜々子先生…一人で悩まないで相談されて下さい」


「…ありがとうございます…でも…先生には御迷惑かけたくありませんので…」


「そうですか?しかし、何かあったら遅いので、いつでも、相談されて下さい」


「…ええ…ありがとうございます…」





その日の夜、私はリビングでぼんやりとしていた。




「あれ?菜々子さん、まだ起きてたの~?体に…いや…肌に悪いよ~?」


「…そうだね…でも誰にも恋してないから肌に悪いとか、そういう…」




スッ


横髪に触れる裕斗君。



ドキン




「何かあった?一人で抱え込まないで俺に話して。俺達の事なら俺も聞く必要あると思うけど~?」


「…裕斗君…」


「ねっ!菜々子さんの悩みは俺の悩みでもあるんじゃないの~?ほとんど俺達の事で頭悩ませてるんじゃない?」



「………………」




「…部屋に…来てもらえる?実は…ちょっと見せたいものがあるの…」




私は部屋に連れて行く。





「…これ…なんだけど…」

「…写真?誰が、これを?」

「紫尾川さんが……」

「…彼女が…ね~。彼女に何か言われたの?」





私は話をした。




「ただ者じゃないね~彼女。まるで探偵だね~?…でも…」



普段の裕斗君からは感じさせない違う裕斗君が現れ口調が変わる。




「…共犯者がいる確率もある…」

「…えっ!?」

「例えば…結岐先生」


「えっ!?ちょ、ちょっと待って!結岐先生がどうして?まさか、そんな…」


「本当にそうかな?」

「…裕斗…君…」


「結岐先生、女子生徒からモテる存在だし、自分の立場もあるからね~」


「裕斗君…どういう…」




「つまり…今人気あってモテてる存在の俺。もしくは恋愛絡み」

「…えっ!?」


「先生も男の人だし~…紫尾川さんか、もしくは菜々子さんに好意があるなら、どちらにしても紫尾川さんに協力する可能性があるんじゃないか?って…まあ、俺の個人的な推定。いわゆる、俺をハメるってやつ?」


「だとしたら私に対しての嫌がらせでしょう?先生が協力してるなら」


「俺達に気があるなら2人が協力的になる可能性もありなんじゃないかな?つじつま合いそうだけど…?まあ、気を惹く為なら何でもありなんじゃないかな?正直、俺は結岐先生を疑っているけど?」


「…裕斗君…」




片頬に触れる裕斗君。



ドキン




「菜々子さんは、今のままでいて。俺が必ず先生を守るから。何かあった時は俺が必ず助けるから」





ドキン



「…裕斗君…どうして、そんな私の為に…?」


「…さあ?…同居人だから、一人娘さんに何かあったら、あれでしょう?」


「でも、それは裕斗君だって…第一、同居人は裕斗君なんだよ!一人息子に何かしらあったら申し訳つかない…」




ドキーン


私にキスをする裕斗君。




「もう…逃げたくないから……俺の精一杯の想い無駄にしたくないんだ。ゆっくり、ゆっくり少しずつ前に進みたいから…それじゃ、おやすみ」



私の部屋を後にでていく。



「…裕斗君…」





私の部屋の前のドアに寄り掛かる裕斗君の姿。




「菜々子さん…俺…好きな人を失うくらいなら…死んだ方がマシです……あなたの事…もっと…知りたいから…」







彼の想い



小さな恋の炎が



彼の心を少しずつ


一歩一歩 押し出す



そして



彼の過去が



明らかになる日が



遠くはなかった












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