【旧版】アンダーワールズ・カーズドマジック
有耶/Uya
プロローグ
プロローグ 法帝
太古の話、かの王は不滅の存在となった。
故に神秘は共に廃れることなく、この地に残った。
魔法、魔獣、錬金術、魔術、異世界など。
それらは妄想に消えることなく、
そして世界はそれらを上手く使い、繁栄を極めた。
しかし、その世界はそう長く続かなかった。
幾多にも重なった軍団の列。
地上を覆い尽くす双方の犠牲者。
血で血を洗うことすら生温い絶滅戦争。
……勝敗は誰の目にも明らかだった。
文明は滅びた。世界は再びゼロからスタートした。
人類は、復興を諦めなかった。
苦難は山ほどあった。しかし彼らは全て退けた。
自分たちの知恵と文明の残骸を頼りに。
その甲斐あって、世界は息を吹き返した。
そして、ヒトは神秘に頼りすぎることをやめた。
神秘は世界をより良くする。
だが同時に世界を滅ぼしうる力を持つ。
人類は神秘を利用すると共に神秘を監視した。
二度とあの様な惨事を起こさないため。
彼らは神秘を以て、神秘から世界を守ると誓った。
彼らのことを、人々は『
※
一世紀前、魔獣大戦は終焉を迎えつつあった。魔獣側は魔獣の王が直接軍を従え、本格的に地球を侵略し始めていた。各地で戦闘が激化する中、レトン王国西部では魔獣の王の軍隊と人類の一騎打ちが行われていた。この戦いの勝敗によって、戦局がどちらに傾いてもおかしくない。双方が主力を投入する総力戦となった。しかし、その結果が目に見える程、魔獣は強大であった。
「ロイ!」
「なんだっ……てゲンか」
「おいおい、いつも聞き慣れている声を忘れかけるなんて、耳でもやられたか?」
「そんなことはない……ただ、切迫しているとどうしても聞き取りづらくてな」
「そうか。それなら仕方ねえ。俺も同感だ」
人類軍兵士の一人、ゲンが同じく兵士であるロイを呼ぶ。二人はメイジャーであり、十数年もの間、コンビとして活躍してきていた。戦場の真っ只中で、二人はお互いの戦況について話し合う。
「そっちの戦況はどうだっ……ておっと」
襲いかかってきた魔獣を、ゲンは難なく撃退する。ロイは気にせず、問いを問いで返した。
「ゲンこそ、ここに居るってことは、そっちは全滅したって言うのか?」
「ああ……」
「参ったな。こっちも壊滅的だ」
「オヤジが敵にやられるとは思ってなかったよ」
「なんだって? あのドン様でさえやられるのか?」
「正確には重傷を負って戦線を離脱した……世界トップクラスの実力でもあっさりだった」
「もう世も末なのか……」
と、ロイはため息をつき、二人で空を見上げた。晴天などどこにもない。どこもかしこも黒い雲のようなもので地球は覆われている。ここ数日、太陽を見たことがない。見るのは宙に舞う火の粉と、たまに現れる空飛ぶ魔獣の群れ。きっとあのときの人々は、これより酷い光景を見たのだろう。呆然と空を見るロイの横でゲンが立ち上がった。
「だが諦めてないだろ?」
ゲンが笑い、ロイを見る。「あるじゃねえか。こんなことになったときのために創った技が」
ロイは一瞬思考を巡らせ、思い出したような表情をすると思うと、笑った。
「ああ……すっかり忘れてたよ。そんな技を創ったな。二人じゃないと、できない技」
「だが……いいんだろうな?」
ふとゲンの顔が厳しくなる。「この技は、俺たちの命と引き換えに出せる技だ。その覚悟はもう出来てるか?」
ゲンは真剣にロイの返答を待つ。ロイは少しだけ迷ったようにも見えた。しかし次の瞬間にそれは杞憂だということに気づく。
「そんなの……お前と組んだ日から、出来ているに決まってるだろ」
ロイが笑顔で答えた。つられてゲンも、顔の張りが消えて笑顔になった。
「じゃ、行くぜ」
ゲンの言葉と共に、二人からオーラが湧き出てくる。それを察知し、付近の魔獣が一気に襲いかかって来た。
「巻き込んだ兵士達には、悪いことをしたな」
「そうだな。せめてあの世で土下座しようぜ」
魔獣達は二人のすぐ近くまで来ていた。その瞬間、二人は跳び、襲いかかって来ていた魔獣をはるか遠くから眺めた。安全地帯に着地した二人は、休むことなく主戦場の先、魔獣側の本陣へと向かう。
そして王の目前。どこから出ているかも分からない煙と強大なオーラのベールによって、その巨大な姿を拝むことは出来なかった。しかし、姿を隠せる程強大なオーラが、今そこに居る魔獣が王であることを物語っていた。
「おやすみ。魔獣の王様」
「派手に逝けよ」
二人が閃光に包まれる。
――
二人を包んだ閃光は、瞬く間に戦場一帯を覆い、焼き尽くした。魔獣は消え去り、そして世界には再び平和が訪れた。
偶然にも終宴の飛遊星を目撃し、尚且つ生存した者が居た。その者の証言によって、魔獣の王を討伐した者はゲンとロイだと判明。国連は戦い抜いた兵士達に感謝と追悼の意を伝え、ゲンとロイに『法帝』の位を授けることを発表した。
以来、法帝は魔法使いの最上位であると共に、その偉大さ、勇敢さから、数々の戦士の目標となっていった。
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