第39話 こども3

トーマが帰った後、話を聞いてもらおうとミランダの部屋に行った。


私の顔を見たとたん笑い転げているのは何故なの?


「いやぁ、『顔だけは可愛い方』『顔だけは格好いい方』って、子供みたいな言い合い。面白い貴族を見たわ。」


さっきのやり取りを聞かれてただなんて…。


「ルーナは何か弱みがあったの?言い負けてた感じだったけど。」


「何の構えもなく突っ込まれて、少し圧し負けたの。」


シュート君の事を考えた…っていうのは、ミランダが気にするから言わない方がいいよね。


「そうだ。明日用があって街に出るんだけど、ルーナは何か欲しいものはある?」


「今のところ思い付かないわ。」


「そう。まぁ良い物を見つけたら買ってくるか連れてくるかするわ。」


「ん?うん。」


連れてくる…?

よくわからないけど、もう限界…。眠い…。


ミランダの部屋のソファーで寝てしまったのに、朝になると私の部屋のベッドで寝ていた。


ミランダが運んでくれたんだわ。


お礼を言うのに部屋に行こうと思ったけどやめておいた。街に行くと言ってたから、部屋にいるわけないしね。

だって、既にお昼の12時だもの。誰か起こしてくれてもいいよね…。


・・・・


ミランダが来ていたのは第1騎士隊の駐屯所。


「確かこの時期はここに……いたいた!!ヘンリー!」


「…あ、ミランダじゃねぇか。何か用か?」


「いや、ちょっと小耳に挟んだんだけど、ルーナ・ラッセンと何らかの確執があったりする?」


「…あの女は女じゃねぇ。」


「山ほど虫をくっ付けられたから?」


「何故それをっ!?」


やっぱり。


「本人から聞いたの。」


「ああ、ルーナの護衛ってミランダだったのか。ルーナはラッセンと結婚したんだったな。何が良かったんだか。」


「知り合い?」


「いや。全然。」


…さも知り合いのような言い方だったのに。


「今どこにいるんだ?ルーナは。」


「それは言えないけど伝えておくわ。名前しか覚えてなかったから、ヘンリーの事。」


「あの女…。忘れただと……。俺があの日からどれだけ苦しい日々を歩んできたと思ってやがる。」


「何があったの?」


「親父に、『ルーナに負けてるお前は騎士になれない』って、毎日虫を触る特訓させられた。」


「で、触れるようになったの?」


「あ?じゃなきゃこんなとこでやっていけるわけねぇだろ。今じゃ『ヘンリーが騎士になれたのはルーナのおかげだ』とかニコニコ顔で言いやがる。あのクソ親父…。」


陛下の護衛は独立した組織、そのトップである隊長の息子が『虫が触れない』じゃやってられないか。


「この事は誰にも言うなよ。」

「言わないわよ。」


隊長にとってルーナは元気で可愛い子、そして恩人。


とりあえず虫事件は問題なし。

離縁時に不利な状況にならない為に、確認だけはしておかないと。

その為に『お父様のお友達リスト』を作る。


…面白いから。

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