第37話 こども1

誰が来るのかと思えば、アナだった。


「こらっ!!イーサンっ!!こっちに来なさい!!すみません、お話中に。」

「やだぁ!ルーと遊ぶのー!」

「わがまま言わないのっ!」


アナが急いでイーサンを連れて部屋から出ていってしまった。


「あっという間にいなくなったな。」

「うん。」


『イーサンと遊ぶから1人で行って』…と言ったのに、肝心のイーサンがいなくなってしまったわ。


「ルーナの用は終わったようだし、一緒にエミリーに会いに行けるな。」


急に手を握られ、引っ張るようにしてエミリーのいる部屋へ逆戻り。


「っちょっと!離しなさいよ。トーマ、貴方は私に指一本触らない約束よ。」

「俺にぶつかってきた女がよく言えるな。」

「…あれは子供の頃の話でしょう。」


本当に性格の悪い男ね。

まさか初恋の相手に、『大嫌い』という言葉を上書きする日が来ると思わなかったわ。


「お2人とも、静かにしてください。」


カルラさんにあきれ顔で怒られてしまった…。


「ごめんなさい。」

「すまん。」


エミリーはスヤスヤ寝ている。

カルラさんだとすぐ寝るんだよね。私があやしたら泣いちゃうのに…。やっぱり緊張してギクシャクしているのが伝わるのかな。


「…少し大きくなった気がする。」

「当たり前でしょ。日々成長しているんだから。」


産まれた日に見ていたのなら、少しの違いもわかるのかもね。


側にある椅子に腰掛けて、トーマがエミリーを嬉しそうに見ていた。

伯爵の娘と結婚。

同じ爵位の私と結婚するなら、彼女を選べばいいのに。

簡単に考えれば、彼女には婚約者がいて断れない相手。トーマだって奪えないほどのね。


10分ほどして目を覚ましたエミリーは、すぐに泣き出してしまった。


「貴方が側にいると泣くんだわ。負の感情がエミリーに伝わるのね。」

「どういう意味だ。」

「『酷い男が側にいるから助けて』ってね。」

「……」

黙るって事は、多少なりとも罪悪感はあるのね。それすら無かったら、人間だと認めないわ。


「ルーと一緒にいても泣いてるぞ!」

「え?」


振り返ればイーサンが私のすぐ後ろにいる。


「…イーサン…いつからいたの……?」

「ルーがそのオジサンとしゃべってる時から。」

そういって、私に隠れてトーマを指差した。


…結構前からいたのね。


「オジサン…」


トーマ…ショックを受けてるわ。



「プフッ!アハハ!オジサンっ!!」


ちょうど部屋に入ってきたミランダはそれに大笑い。


「あ!ミランダみっけ!遊ぼっ!」

「そうだねー。遊ぼうか。オジサンは放っておいて。」


イーサンはミランダと共に行ってしまった。


「子供は正直だな。ルーナもエミリーに泣かれてるのか。酷い女だから。」


ムカつく…。

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