第12話 ピアノ3

夕食後、はなれでピアノレッスンの事を話した。


「ミランダ…ピアノ全然教えてなかったでしょ。」

「だって、教える技術なんてないから。」

「でも、いつもミランダが見てるんでしょ?ピアノが弾けるからじゃないの?」

「1曲ひけたら、それだけで『ピアノがひけるミランダ』にされちゃったのよ。」


だから皆同じ曲だけ弾けてたのね…。


「私は指使いしか教えられなかったから、今度ミランダが行く時はきちんと教えてあげてね。」

「……」

「無言にならないでよ。」


「ねぇ、ルーナ」

「どうしたの?」

「多分あと3日以内に侯爵家から誰か来ると思う。」

3日以内…

「…何故、そう思うの?」

「荷物は週に1回は届けられてた。私達がいなくなって今日で7日だから、もういないのは気づかれてる。気付かれない期間の最長が7日なの。ルーナがいなきゃ真っ先にここに探しに来ると思う。」

「うん、その時は1度おとなしく帰るよ。」


無理に残ろうとすれば迷惑だしね。


「ごめんね。ここに置いてあげられたらいいんだけど。」

「いいの。ただ早いか遅いかな話だし、子供が産まれる前に話をつけておくわ。」


今日気がつかれていたとして、明日から捜索。侯爵邸からここまで3日。既に気がついていたなら最悪明日…。

2週間弱でも、あの小屋にいなくてすんでスッキリしたわ。

あの小屋にあと2ヶ月くらいは閉じ込められるけどね…。


「よし!最大で3日、果物の仕分けだけでもマスターして帰るわ。」


来年も弟子入り希望して帰らないと!


「ねぇ、ルーナ。明日メレブにクッキーを焼いてくれない?」

「…クッキー?」

「メレブがせがむんだけど、家で誰も作れる人はいないの。リンダさんも料理はなれてるけど、お菓子は全く作れないから。」

「いいけど…、また仕事が…。」


…これって、わざと遠ざけられてるのかしら。


「あ、別に手伝ってほしくないとかじゃないの。この辺は今が1番日焼けするのよ。肌より先に目が真っ赤になるの。目を痛めるのはよくないから、徐々になれていかないと。仕事を始めるにあたって、環境に適応出来る体は基本なのよ。ごめん、初日は試したの。1日で逃げ出すかも…ってね。」


逃げ出す…。そう思われて当然よね。肉体労働をしなくても生きていける身分にあるんだから、楽な方へ逃げるかもしれないって考えるのが当然だもの。


「逃げないわよ。まず下積みだと考えるわ。」

「よろしくね。『ルーねえちゃん』」


クスクス笑いながらミランダが言った。


メレブ君をみてるだけでも大変なのに、育児ってもっとだよね。

愛人ははおやも一緒に暮らすだろうし、大丈夫だよね。

育児…自分の子供ではないし、その子の為に酷い扱いを受けてる。子供は関係ないのは解ってるのに、わりきれなかったらどうしよう。1番怖いのはそれだわ。

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