第10話 ピアノ1

翌日14時、シトロン君とメレブ君に連れられて、ピアノのあるお宅へ行ってるんだけど、途中でメレブ君が歩かなくなった。


「どうしたの?」

「つかれた。もう歩けない。ルーねえちゃん、だっこ。」


家からまだ100mくらいしか歩いてないと思うんだけど。


「おい、メレブ!自分で歩けって父ちゃんに言われただろ!」

「……」

何かわからないけど、メレブ君ご機嫌ななめ…?

「おい!あまえるな!」


シトロン君がメレブ君をズルズル引っ張ると、メレブ君は何故か抵抗してる。


「シトロン君、ピアノのある家まで後どれくらいあるのかな?」


「あの角曲がって100mくらい。」


100m…今の私に抱っこは無理だわ。


「『ごうとう』、メレブはほっていくぞ!」

「えっ!?だって…」

「置いていったら、そのうち泣いて付いてくる。」


そういうものなの?道は馬車も何も通ってないから危険ではないと思うけど。


「ルーねえちゃん、だっこぉーー!」

「あの、シトロン君。メレブ君が…」

「駄目だ。1回あまやかしたら、どこに行ってもごうとうに抱っこして連れて行ってもらおうとするから。」


さすがお兄ちゃん。


「うわぁぁん!まってぇーーっ!」


メレブ君がとうとう泣いて追いかけて来た。


「ほらみろ、歩けるくせに!」

「ぅう…つかれたのー!」

「後ちょっとで、マイラの家につくから。」


グズグズいいながらも、メレブ君は私の手を握って歩いた。それから歩いた距離100mもなかったと思う…。8才のシトロン君に案内させるくらいだから、全体的に遠い訳がないよね。



着いたのは、白くて大きな2階建てのお家。


「マイラはいいやつだけど、ババァは嫌なやつだからな。」

「うん。」


ババァ…、嫌な女に成長すると、『ババァ』扱いされるんだ…。


ガチャッ

私がノックをする前にドアが開いた。


「ルーナさんっ!?」


出てきたのは茶色の髪の少しそばかすのある可愛い女の子。


「ええ、はじめまして、」

「そんなのいいから早く!皆ずっと待ってるんだから!」



案内された部屋には既に6人も女の子がいた。

約束は14時30分だったよね。間違えてたのかな…。


「ねぇ、ルーナさん!何が弾けるの?」

「これ教えてっ!」

「私はこれっ!」


女の子達は次々に質問してくる。


「うん、1人ずつ聞いていくから待ってね。」


う~ん、

教えるのはいいんだけど、楽しくのびのび弾きたいのか、基礎から弾きたいくらい真剣なのかによって変わるんだよね。


「ミランダからどんな風に教わってたの?」

「ん~、何か自由に弾いていいって言われて順番に弾いてただけかな…。間違ってるところは言うからって。」

「…そうなんだね。」


ミランダ…まさか何も教えてないんじゃないよね…。

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