第4話 強盗疑惑

次の日、ミランダの実家へ出発。


私は黒い髪のウィッグをつけて帽子をかぶり、一応変装っぽい事はしている。もし私を知る誰かに声をかけられると面倒だしね。


「確認ですが、3ヶ月後に1度は必ず邸に戻ります。いいですね。」


「もちろんよ。戻るわ。」

「1度は…。離縁する気満々ですね。」

「問題ないわよ。侯爵が貧乏伯爵の娘を選んだのは、私が『虐められてる女』だったからだと思う。雑な扱いをしても逃げないだろうって判断しただけよ。」

「別れて貰えなかった時はどうするんですか?」

「大丈夫。子持ちでも侯爵と結婚したい子はいくらでもいるもの。侯爵の方から私に『別れてくれ』って言ってくるかもしれないわ。」

「まぁ、そういう事もありえますが…。」

「帰ったらすぐに契約書を書いてもらうつもりなの。『1年たったら私と離縁する』ってね。すぐにでも別れてって言いたいけど、それはさすがに無理だと思うから。」

「契約書って…」

「いい考えでしょ?離縁もだけど、子育ては全て仕事扱いにしてもらうわ。別れる時にその給金を貰って、それを資金に新しい生活!」

「それが農家になる事ですか…。」

「そうっ!」

「…給金とかでなくても、離縁する時にある程度お金は請求出来るんじゃないですか?」

「こちらから持ちかける話だし、そんな物は要らないのよ。後から面倒な事になりそうな材料は棄てていくわ。給金という形にするのも後腐れないからよ。」

「『愛人と子を作るのは1年後以降にする』というも、契約事項に入れておいた方がいいですよ。」

「そうね。離縁するまでにまた妊娠でもされたら困るもの。ありがとう、ミランダ。」




3日目のお昼

ミランダの実家に着いた。


「大丈夫?私、変なところはないかしら?門前払いとかされない?」

「する訳ないですよ…。」

「そう…。」


緊張するわ。見かけは大丈夫だよね。服だって、ここに来るまでに皆に溶け込めるのを買ったし。


「……」

「ミランダ、どうかしたの?」

「いま全員畑に行ってるかもしれません。ここで待ってて下さい。」

「ええっ!?まって…っ…!!」


追いかけようとしたけど、どう考えても追い付けない…。


「足、速すぎでしょ…。」


どうしよう、ミランダがいない間に誰か来たりしたら。


カチャ

「ん…?」


ドアが少しだけ開いて、その隙間から赤毛の男の子が覗いてる。


「なんだ、お前は!さてはごうとうだな!」


ごうとう…?


「あの…私は強盗じゃなくて…」

「ごうとうは自分の事を『ごうとう』だって言わないんだっ!」


最もなんだけどさ…。

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