第26話 エルダーラビリンス
「ここは?」
奴…憂国の使徒の罠にはまったと思われる私は今、謎の広い空間にいた。
「ふむ、成功したか」
後ろから声!
私は素早く三笠刀を引き抜き構える。
「まあ、落ち着くがいい、言ったろう?戦う気がないと」
「…そんなもの信用できるわけがないだろ」
さっきまで全力で戦っていた相手だぞ?
さて、ここからどうする…奴の狙いはなんだ?
「彼も言っているようにもう戦う気はありませんよ?」
今度は横から声が聞こえてくる、新手か!?
そう思い、横に振り向くと…。
そこには白いスーツを着た二十代半ばと思われる男。
「あんたは…たしか、空狼!?」
「ええ、先日ぶりですね、樹さん」
…なんだ?なんだこの状況は!?
なぜ、探索者協会の最高戦力たる空狼がここに?
「神の使徒殿、どうやら彼女はこの状況を理解できてないようであろう」
神の…使徒…確か執行使徒の…一席!?
まさか?
「空狼…あんた、執行使徒だったのか!?」
「ええそうですよ、僕は…探索者協会の最高戦力であるとともにアパスルの執行使徒です」
おいおい…おっさんの直観がもろ当たりじゃないか…。
「…人類の裏切りもの」
「それは語弊がありますね」
「語弊…だと?」
「人類の裏切り者はアパスルと…探索者協会いや、すべての探索者とも言えますね?」
「…へ?」
こいつは何を
「あなたはそれをすでに知っているはずですよ『代行者』?」
私が知っている…だって?
「唐突ですが…探索者になれる条件はご存じでしょうか」
それは、さっき聞いた….
「人間を越えたい…という願望を持つこと…だろ?」
「残念ながら違います」
違う?私は確かに…
「問いかけなさい、あなたのその力を使って」
問い…かける?その力?
「『代行者』の能力を使ってこう呼びかけるのです『あなたが探索者になったのはなぜだと思うか』と」
…今の状況はあまりわからない、だが…。
私が探索者たちの願いを「代行」した時、その願いには幾分かの…。
「狂気」…そう狂気じみたものが含まれていた…そんな気がするのだ。
私は…いや僕は代行者の能力を解放し、そして問いかける。
―あなたが探索者になったのはなぜだと思うか―
と、
するとまた数多の探索者の、今度は想い、願望が流れ込んでくる。
それをさっきと同じようにその全体を視る…すると。
『『『生き残りたい…人超えて…残りの人類を…見捨ててでも』
へ?…僕は何を見ている?何を聞いている?
『『『生き残りたい…我々は下等な人間を超える存在となり…来る救世主様たちに仕えるのだ』』』
なんだ…これは?
「…探索者になる条件…それは来る世界の終末時に他人を蹴落としてでも、生き残りたいという、強烈なる生への執着です」
『生き残りたい』『生き残りたい』『生き残りたい』『生き残りたい』『生き残りたい』『生き残りたい』『そのためなら』
『『『家族だろうと…友人だろうと、下等生物は…すべて来る救世主様に捧げる』』』
ああ、これは…。
代行者の能力を解除する
そうか、私は確かに探索者たちにどこか違和感があった。それの正体は…彼らの持つ狂気。
しかし…わからないことがある。それは
「救世主っていうのは…?」
「樹さん以外のすべての…探索者は無意識に勘づいているのですよ…救世主なる存在を」
「だから!その救世主っていうのは!」
「簡単です」
簡…単?
「救世主とは異世界からの侵略者…ダンジョン、正式名称、機動式選別装置「エルダーラビリンス」を使ってね」
異世界からの…侵略者?
「彼らは人間から進化した存在、そして数多の世界を侵略し、そこに住む知的生命体を「エルダーラビリンス」を使って選別、選別から外れたものは「処分」、選別を通ったものは「奴隷」として使う」
…なんだ、それは。
つまり、探索者は自分の命のために…それ以外の数十億の人類を…見捨てるっていうのか。
ああ、否定したい…こんなばかばかしいこと。
でも、私は、確かに、彼らの、探索者たちの、願いの、全体を、知ってしまった。
彼らの持つおぞましいとも形容できる願望を。
だが、
「探索者たちの願望…ここにいるあんた達2人分の願望だけなかった、どういうことだ?」
そう、先ほど見た探索者たちの願望、一条や姫川、おっさんや爺さん、それに春樹、みなが無意識のうちに心の奥底に抱えているもの、私を含めここにいる三人にそんな願望はなかった。
「それは…僕たちが、探索者ではないからですね」
「探索者じゃない?じゃあ私たちは…何者?」
「僕たちは、この世界が人をベースに創り出した世界防衛因子です」
世界…防衛因子?
「そう、この世界を守るため…この世界の『裏切り者』たちを抹殺するために世界が生み出した存在です」
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