第23話 憂国の使徒
「…気を取り直して、そろそろボス戦に行くぞ樹、姫川」
「らじゃ~」
「りょうかーい」
「二人して適当な返事しやがって…まあいいや、もう」
さて予想外の他探索者とのエンカウントがあったが、次はボス戦かぁ。
ワイバーン、話を聞く限り私はただ弾幕を張るしかできることはなさそうである。
ほぼ姫川頼りかな?
…ゴゴゴゴゴゴゴ
と、巨大な扉が音を立てて開いていく。
一条はそのままボス部屋へと入っていき、それに続いて私と姫川も入る。
さーて、ワイバーン、どんな姿をしているのかねぇ。
ん?
「なっ!?」
と、歩いていた一条が突然声を上げて歩みを止めた。
…はて?どうしたのだろうか?
「おい、一条一体何が…」
一条に近づいた私の視界にそれが目に入った。
それは真っ赤な体躯をしたドラゴン?…いやこいつがワイバーンか?
…問題はそいつが自分の体と似たような赤色をした液体を体中から垂れ流していること。
端的に言うとワインバーンと思われるそいつはすでに絶命していた。
…いや、どういうことだよ。
「おい、一条…」
私が一条に状況を問おうとしたら
「は~、全く…吾輩は待ちくたびれたぞ」
!?
男の声?どこから?
「こっちだよ、全く」
上から声が聞こえてきたので見上げると、いつの間にワイバーンの死体の上に男がたっていた。
その男は黒い仮面をつけて、白い軍服?をきて腰に刀を携えて、という出で立ちだった。
…黒い仮面…どこかで…。
「…誰だ、てめぇ…」
一条が謎の男に問う
「ふむ?吾輩は…」
と、男が一条に返答しようとした時
「ファイヤーボール!!」
当然、隣にいた姫川がそう唱えて男に向かって魔法を唱えた。て、ええ!?
いや、確かに多分敵だろうけどいきなり!?
私の困惑をよそにファイアーボールは男に直撃した。
―ドゴンッ!
爆発が起きる。私は爆風に揺られ片膝をつく。なかなかの威力!
「ちょ!姫川!」
私が抗議の声をあげようとし….
―ドバァッ!
突然突風が起きる。なんだ次は!?
「…人様は話終わる前に攻撃とは…全く礼儀がなってないな」
ワイバーンの死骸の上には謎の男が刀を抜いた状態で立っていた。
「…無傷かぁ」
姫川がつぶやく…アレ食らって無傷ねぇ….
「…まあ、いい吾輩は細かいことは気にしない主義でな。あらためて自己紹介しよう」
そこそこの威力に見えたけど、細かいこと扱い…。
「吾輩はアパスルの執行使徒第六席「憂国の使徒」である!」
…やっぱりアパスルか、それも執行使徒。
憂国の使徒って、しかもその恰好…なんか...端的に言えば私以上の中二病…
「…執行使徒が何しに来やがった」
「ふむ、秘密だ!」
は?秘密
「任務の内容をべらべら話すような奴は組織から排除されるのが常だぞ?」
なんか異常者集団に属している奴に正論っぽいこと言われたんだけど。
「…まあ取り敢えず、貴殿らには私と相棒の「武蔵刀」が相手になろう」
取り敢えずって…というか
「武蔵刀?」
「ふむ、貴殿の持っている呪神武器「三笠刀」の後輩ともいうべき刀、即ち、海底にある戦艦「武蔵」の一部を秘密裏に引き上げ、その鉄でもって打った呪神武器である!」
…三笠と同類の呪神武器か…じゃあやることは一つ!
「戦艦同士、正面から…」
―やめろ、馬鹿者―
むっ?
―お主は12インチクラスの前ド級で、18インチクラスの超ド級と正面から打ち合う気か?―
三笠が呆れたように言ってくる…確かに無謀かもしれない。
戦艦「武蔵」、大和型戦艦二番艦、46センチ砲をそれを搭載する戦艦としては比較的小柄な船体に納めた、当時の日本の技術の集大成ともいえる産物、同時に無用の長物とも揶揄された艦。
この船を沈めることができたのはおそらく日本を除くと、当時の超大国、米英くらいだろね。…よりによってなんでその二国に喧嘩撃ったんだよご先祖様。
なにが鬼畜米英だ、相手が悪すぎるだろうに…。
いやまあ当時の状況についてはリアリスト学派の間で未だ議論の対象になっているものだから、色々と複雑な事情があるんだろうけど。
ってそんなこと考えている暇はない、今は割とピンチな状況なのだ。
執行使徒…こんなふざけた野郎でも実力は本物だろるなぁ…。
「樹、姫川、とにかく奴を牽制しろ」
「牽制?」
「ああ、多分だが奴の防御を突破できるのは俺の粉砕者だけだ、だが俺の攻撃は近接攻撃だ」
…まあ、確かに、姫川の最大出力ファイアーボールでもキツそうだもんな。
となると一条の「粉砕者」に頼るしかないわけか。
しかし…
「多分、あいつの火力…私の比じゃないくらいヤバいが、そもそも近づけるか?」
「…ああ、だが、やるしかねぇだろ」
まあ、そうだけど。
「ファイアーボール×1000」
姫川が魔法を唱える、おお、1000の火の玉が空中に浮かぶさまはなかなかに圧巻だな。
「よし行くぞ」
「えい!」
一条が走り出すと同時に姫川が魔法を放つ。
戦闘開始だ!
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