第20話 宝箱

「…次は俺の番だな」


あれから、少し時がたち、新たな魔物を探し求めて草原をさまよっていた私たちは、獲物となるもの、二足歩行するオオトカゲ、リザードマンの群れを発見した。


あれがリザードマンかぁ…


「うん、意外とかわいいかも」


爬虫類ってなんか愛嬌があるよね。


「樹、お前…趣味が悪いな…」


「い、樹ちゃん…マジ?」


なんか二人からドン引きされている…爬虫類が嫌いなのかね。


それにしても次は一条が戦うのか、でも


「…どうせ正面から殴りこんで「粉砕」するとかじゃないのか?」


私にデモンストレーションするまでもないんじゃないのか?


「…まあ、取り敢えず、見てろって」


取り敢えず見てろって、何かあるのか?


と、突然


「隠密」


一条がそう呟く


「あれ?」


すると。


なんか…目の前にいる一条の何か、気配?と存在感が薄くなっているような気がする。目を離したらそのまま見失ってしまいそうだ。


隠密、か。やはり気配を断つスキルなんだろうか、色んなスキル持ってるんだなぁ。


…私、スキルほとんど持ってないけど、このままで大丈夫なのかねぇ…まあそのうち使徒スキルが発現するらしいけど。


そして、そのままかがんでゆっくりとリザードマンの群れへと向かっていく一条。


…あ、やべ、見失った。


「一条君はもともと役割が斥候だったからね、ああいうスキルをいくつか持っているんだよね」


姫川が話しかけてくる。


…他にも持っているのか


「樹ちゃん、あれが一条君の戦い方…まあ普通に正面から戦うことも多いけどね」


使徒スキル「粉砕者」の説明を聞いた限り、正面からの戦いが得意そうだものね




―ドバンッ!




と、考え事をしていたら突然、衝撃音が聞こえる、慌ててそちらに意識を向ける。


そこにはばらばらになったリザードマンだったものが複数転がっていた…うんグロイ。


というか、何が起こった


「俺が奴らを「粉砕」したんだよ」


と、突然隣から声がしてそちらを見る。


そこには…腕を組んだ一条が立っていた。


いつの間に…というかナチュラルに人の考えを読むなし。


しかし、まあ何というか


「…なんか想像してたのと違うな」


粉砕者というより暗殺者じゃないだろうか


「まあ、お前ならそう言うと思ったよ…隠密で近づき、粉砕者の能力補正を利用して一撃で仕留める…俺の戦い方の一つだ」


まじで暗殺者じゃん。


「といっても、こんな戦い方は執行使徒には通用しねぇだろうからな。だから俺はこれから正面から戦っていくことにする」


執行使徒との戦いねぇ…そういえば


「一条はもともと斥候だったんだろう?ということはスキルもそれ系によっていて、攻撃力こそ使徒スキルで補えるだろうけど、防御力はどうなんだ?」


「…気づいたか…そうだ、俺は執行使徒と戦う上で防御の面でもろい…ある程度は回避で対処するが、それも限界があるだろう」


「…つまりは」


「ああ、執行使との戦闘では、俺と姫川がこうである以上、お前がタンクになるな」


げぇ…まじかよ。


「いや、嫌なのはわかるし、俺だって中学生女子にタンクをやらせるのは気が進まねぇよ…だからまあ、レベル上げ中に執行使徒に出会わないことを祈るしかないな」


「…おっさんをパーティに入れられないのか」


「古館さんはああ見えて結構多忙なひとだからな…」


そうかぁ、おっさんなら何でもそつなくこなしそうだし、心強いんだけどなぁ


「まあ、空狼も色々と忙しいみたいだし、アパスルに対して俺たちが戦力的に劣勢である以上、配られた手札でどうにかするしかないってことだ」


世知辛いねぇ


「ねえー、樹ちゃん、一条くん、あれ!」


と、突然姫川がどこかを指さし声を上げる。


なんだ、なんだ


姫川の指のさす先を見るとそこには、木製と思われる箱があった。


まるで、そうゲームに出てくる、宝箱みたいなのだ。


「あれは?」


「お前の想像通り宝箱だな、あの中に様々な迷宮産アイテムが入っている」


「へぇ、あれが」


「よし、早速開けよう!お宝♪お宝♪」


テンションを上げた姫川が宝箱の前まで行きそして、それを開けた。


「罠とかってないのか」


「ああ、今のところ確認されたことはないな」


だからあんな無警戒であけたのか。


宝箱の中身は何だったんだろうか。


私たちも姫川に近づき、宝箱の中身を見る。


そこには何か液体が入った瓶がぽつんと置いてあった。


「これは?」


「これは…この瓶の形…一年若返るポーションだね」


わ、若返る…⁉


「それってとんでもない…」


私が言いかけたところで


「あー、外れかぁ、付いてないね」


え、外れ?若返りのポーションが?


「外れなのか?」


「ん?ああ樹はダンジョンに関しての知識があまりなかったんだったな、そうだ、これは最初に姫川が言った通り、外れと分類すべきものだな」


「これで外れ…」


あたりには一体なにがあるんだ?ちょっと怖くなってきたぞ…


「はい、これ樹ちゃんにあげる」


姫川は箱からポーションを取り出し私に手渡してきた。


え?


「…何故私に、使い道がないぞ」


「使うんじゃなくて売るんだよ。探索者協会に」


売る?ああそういえばそんなことも可能だったな。


「へぇー、大体どれ位で売れるんだ?」


「まあ500万くらいじゃないかな?」


へー…………へっ!?


「ご、ご、500万!?」


「樹、誰かに、探索者は金があるって言われなかったか?」


…確か、春樹の父さんが


「これがそのからくりだ…迷宮産アイテムはバカ高く売れる」


…稼げるとは聞いていたがここまでとはなぁ


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