第17話 ダンジョン第二層

「なるほど、「ケリヨトの騎士」ですか…これでいいのですね?」


受付で従業員と思われる女性が私たちに確認してくる


「ああ、頼む」


「…私は「変態女と愉快な仲間たち」でもいい」


「…やめろ、樹、お前までボケに回ったら俺が過労死する」


…さーせん、反省します。


「変態女って私のことッ!?樹ちゃん、何気に私の扱いひどくない⁉」


姫川が何か喚いているがどうでもいいや。


「ははは…では「ケリヨトの騎士」で申請を受理します」


「…ああ、頼む」


私たちのパーティー「ケリヨトの騎士」のリーダーは一条に決まった…消去法で。


あのあと結局私は次の日に退院した。そのまま一回、ダンジョンを通って家に帰り、さらに次の日、一条と姫川と合流して、今は探索者協会の事務所(ちなみに地下にあり、しかも建物の中にダンジョンの入り口がある)でパーティー申請をしていた。


…それにしても驚いたのが事務所の内装がまるで異世界ファンタジーに出てくるギルドのそれだったことだ。なんか謎の武器とか壁に飾ってあるし。


ちなみに一条によると、この内装は、あの爺さん…後藤会長の趣味らしい。ラノベにも明るいのか、あの爺さん。


「よし、それじゃあ、早速、ダンジョンに行くぞ、樹、姫川」


「はーい」


「…もう行くのか?」


さっきパーティー申請したばっかだぞ?


「ああ…空狼さんがいるとはいえ、執行使徒たちがいつ本格的に動き出すかわからねぇ、その前に、樹、お前のレベルをできるだけ上げておきたい」


なるほどね、私は変な争いに巻き込まれてしまった身だからなぁ、ちなみに今のレベルは15だ。


神位、つまり魔物の最終進化形態のゴブリンゴッドを倒したのに、たいしてレベルががらなかったのだ。解せぬ。


「久しぶりのダンジョンだなー、私の血がたぎるぜぇ!」


なんか姫川がハイテンションになっているな、というか久しぶりなの?


一条の方を見る


「ん?…ああ、俺と姫川も最近あまりダンジョンに潜れてなかったからな…だから今回はお前のレベル上げと、俺らのウォーミングアップも兼ねている」


ふむ、ちょっと不安だが…まあ大丈夫だろう、姫川はともかく、一条は自分を客観的に見られる人間っぽいし。


「よし、じゃあ早速行くぞ、関東大ダンジョン、第二層へ!」


そうして私たちは出発した












「ここが…第二層…というかダンジョン…だと?」


「ああ、とんでもねぇよな」


一条の言葉に返答もせず、私は目の前の光景に見入っていた。


それは…広大な草原だった、空は青く、2つの太陽が輝き、到底ダンジョン内の光景とは思えなかった。太陽が二つって…某スペースオペラのタトゥ〇-ンかな?


「…まるで異世界に来た気分だ」


「私も最初は顎が外れるほど驚いたな~」


姫川が言う、確かにこれは驚きだ。


「いつまでも呆けているんじゃね、樹、ここは一応ダンジョンの中だぞ」


「そうだった…でここではどんな魔物が出るんだ?」


「えーとねぇ、草原モグラにオーク、ウルフ、リザードマン、後は空にキラーホークがいるよ!頭上注意だね!」


「ほぇー、随分色々な魔物がいるんだな…」


「まあ、他にも色々といるが主にそれらが出てくるな」


一層のゴブリン祭りとはえらい違いだ。


「さて、まずやることはだな…樹、お前が呪神武器を使いこなせるようになることだ。」


使いこなす?どういうことだ?


「わかってねぇ顔だな…とりあえず、お前の呪神武器を出してみろ」


「…でも、出したら30分程度で動けなくなるぞ?」


そしたら、ダンジョン攻略どころではないだろう。


「古館さんも言っていたが、活動時間30分っていうのは全力を出し続けた結果だ…恐らく、力を抑えれば、かなりの長時間運用できるはずだ」


…そうなのか?三笠。


―ああ、そこの坊主の言う通り、低出力で運用すれば、かなり持つぞい―


へー。


「だから取り敢えず、お前の呪神武器を出してみろ…力を抑えるイメージをしながらな」


ふむ、言われた通りにやってみよう、そうしないと私、武器ないし…そういやあのシャベルどうなったんだろう、結構気に入っていたのに…


…まあ、いいや


―来い、三笠、力を抑えて


―オールライトじゃ!―


そういや、確かこいつイギリス生まれだったな。


と、空に刀が出現した。その柄をつかむ


「へぇ…それが樹ちゃんの武器かぁ…なんか普通の軍刀って感じだね」


いや、普通の軍刀ってなんだよ。


姫川に心の中で突っ込みながら、三笠刀を軽く振る。「


…うん、前ほど力がみなぎる感じはしないな。取り敢えず、力を抑えることは成功したということか。


「どうだ?」


「ああ、多分だいじょぶ」


「…よし、これで素手で戦うことは避けられたな」


…一条、お前、私が三笠刀を制御出来なかったら素手で戦わせるつもりだったのか…鬼畜か、こいつ。実はドS?








とまぁそんな感じで素手で戦うことは避けられた私は一条と姫川についてダンジョン第二層を進む。…風景がどこまでも続く草原だから、全くダンジョンを攻略してる感ないな。


と。


「止まれ…早速、お出ましだぜ、オークが4匹だ」


「豚さんだー!おいしいんだよね!」


一条が言う、どうやら接敵したようだ。オークが4匹…というかやっぱり食えるんだなアレ。


私が冷凍庫に封印した例のブツに思いをはせていると。


「よし…樹、お前一人であれをやれ」


え、まじ


「…こういうのはまず先達が手本を見せるんじゃないのか?」


「いや…まずはお前の力を把握したい」


さいですか、まあいいや、所詮オークだし。


「じゃあ、やるかー」


「がんばれー、樹ちゃん!」


「危なくなったら、俺たちがフォローに入る…まあ神位の魔物を圧倒したお前なら不要だと思うが」


そんな声を受けながら私は一歩だけ前へ出る。


さて、どうしようか、オーク達はまだこちらに気が付いてないようだ。ここから50メートルほど先に集団で座り込んで休憩しているみたいだ。


…豚は犬よりも鼻が利くと聞いたことがあったんだが、こちらに気が付いてないとなると案外豚とは違うのか?まあ、魔物に常識は通用しねぇか。


…ふむ、とりあえず主砲で吹き飛ばすか?


―力を抑えた今の状態では、主砲は撃てんぞ?


…なんと、早速力を抑えた弊害が


―まあ、副砲なら撃てるぞ?あの豚ども相手にはそれで十分じゃろ


おお、そういえば戦艦は大砲の宝庫だったな、主砲のインパクトが強すぎて忘れていた。


よし、じゃあ


私は前と同じように、三笠刀を鞘に納め、居合の構え…のようなものを取る。


「…おい、どうした?」


一歩、後ろにいる一条が何か言っているな、けど今は集中、集中


測距よーし、照準よーし。


よし…いくぜ!


―…あ、おい待て、馬鹿者、副砲だろうと至近距離じゃと


「四十口径十五点二センチ砲!」




―ズガアアアアアンッ!




刀身から具現化された八インチ榴弾が、オークが休憩している場所に直撃、炸裂し、オーク四匹をまとめバラバラにして吹き飛ばした。


弾着確認!…てかグロい。


しかし、これで討伐完了だな。


うむ、副砲は使い勝手よさそうだし、なかなかいいな


「うがあああああ!」


「み。耳がああああ、ひあああああ!」


うん?


なんか奇妙な叫びが聞こえたので後ろを見てみると。


そこでは、なぜか、一条と姫川が耳元を抑えたうずくまり、悶えていた。


…何してんだ、こいつら?


―いや、お主…人間が耳栓なしに至近距離で八インチ砲ぶっ放されたら、鼓膜が吹きとぶぞ?―



…あっ、やべ



…うん、とりあえず。


「…てへぺろ」


へへ、わざとじゃないんだ。


「うおおお!、何も聞こえねぇがこいつがふざけたこと抜かしているのが表情からわかる!」


「ひゃあああ!樹ちゃん、かわいい顔して、鬼畜すぎいいいいい!」


あー、非難轟々だな。


―…どうやら本当のドSはお主じゃったようだのう―


三笠が言う。



…いや…なんか、ほんと、ごめんて。

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