第112話

 煉がやることは終わった。主人マスター対策として、彼らを挑発し煉にヘイトを向けさせ原初スキル対策のアイテムも発売が開始される。国際カンファレンス以降、主人たちに動きはないのでこれ以上煉に出きることはない。


「ユラさんから連絡はない。あの人たちの考えそうなことと言えば原初スキルを保有していると目されるボスモンスター狩りだろうが...」


 主人たちの目的は原初スキルにあることは間違いない。原初スキル持ちが増えれば増えるほど、世界はダンジョン色に染まっていく。それこそが主人の目的なのだと煉は考えている。それを防ぐ方法の1つが原初スキルをスキルオーブの状態で保有することだ。


「俺もそっちに回るか...高校に行きつつ目星を付けて飛び回るのは無理か。取り敢えずは無視だな」


 原初スキルを保有している可能性があるボスがいるダンジョンを週末の2日間で探索して攻略するのは現実的じゃない。それに戦闘は嫌いではないが、それを探索の主目的とする気はない煉的にボスを目当てでダンジョンを選ぶのは好みじゃない。

 結論として主人たちのことは一旦、考えるのを止めることにするのだった。

 

「...そういえば『慈愛のペンダント』が発売されるのに伴って探索者を始める者が急増するかもって言ってたな...はぉー」


 初心者マナー講座系配信者である煉としては、こういった状況で気合いを入れてマナー講座配信でもすべきなのかもしれないが、ネタ切れ感が凄い。最近まともなマナー講座を配信したのはいつになるだろうかと、遠い目をしながら考える煉。


「ここはドリーの力を借りるか」


 薬草採取という初心者用コンテンツとして最適な手札を持つドリーに頼る気満々の煉である。


 煉自身は初心者マナー講座配信を苦手としている。それは態々言う必要のないマナー。煉が無意識にやっているようなマナーが多くあるためである。無意識にやっているためそれを動画のネタにすると言う発想がなく、常にネタ切れに悩む結果となるのだ。


 しかし逆に言えば、煉の影響もあって入ってくる新人は、煉チャンネルでダンジョンの常識を学んでいる者たちもいる。

 中、上級者からすれば頭がおかしいとしか言えない所業だが、トッププレイヤーから学ぶのは間違ってはいない。更に煉の行動を上手く一般の人レベルに落とし込んで説明してくれる者たちがコメント欄にいるのも大きい。

 そして諸々の行動は兎も角、マナー等に関して言えば煉はすこぶる良い。それを見て学んでいる者たちのマナーも自然と良くなる。

 

 煉の意図としないところで、マナー向上に一役買っているのだ。その影響の大きさを世間が認識するのは、少し先の『回復革命』で新人が急増する頃になるだろう。


「...そういえば、ペンダントの開発の礼も出来てないか。何か考えないといけないが、氷華にでも聞いて...!」


 煉に分からないことは大抵、氷華が知っている。そのため氷華にドリーへのお礼を聞こうと考えたが何故か悪寒がした。煉の勘が氷華に聞くなと言っている。


「こんなこと無かったんだが...まあいい自分で考えるか」


 煉は、日々の探索で培われた勘を信じて氷華に頼らないことを決めるのだった。




☆☆☆


新作投稿しました。


錬金術師のハンドメイド~フリマやってるだけなのに伝説的な扱いされてました~

https://kakuyomu.jp/works/16817330660500122040

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