第61話 毒龍
毒を喰らい浄化する行為は毒龍の縄張りを荒らしている行為に他ならない。そのため煉が浄化作業をある程度こなしていたら、獲物の方から近づいてきた。
【毒龍登場!!】
【あれ? ボスなのに自由に動けるん?】
【毒龍がイレギュラー個体だから?】
【煉くんやれーーー】
毒龍は強さ的には通常のドラゴン種より強く竜王よりも弱いくらいの位置付けである。毒の厄介さを考慮すれば竜王に並ぶくらいの危険度とする所もある。そもそも毒龍が発する毒のせいで近づくことも容易ではない。しかし
「ヴィーナスのお陰で毒はほぼ効かないから問題、ない!」
【煉くん特攻!】
【毒系のモンスターに対してやる行動と違う】
【もしかして煉くんって毒無効化スキル持ち?】
【まあ、さっき浄化してたし】
ヴィーナスリングの恩恵により状態異常への超耐性が備わっている煉にとって毒龍の毒はそこまでの脅威ではないため構わず特攻する。
予想外の行動に驚いた様子の毒龍だが、煉を近づけさせまいと毒ブレスで迎撃しようとした。しかしブレスは『暴食』の栄養となってしまう。
「喰えグラル!」
【ブレス止めた!】
【今、最初期の動画と見比べてるけど戦い方変わりすぎ】
【毒龍もきょとんとしてる】
得意の毒ブレスを意に介さない煉に動揺している毒龍は、近づかれた動揺も相まって、繰り出す攻撃は単純で避けてからの反撃も容易に行えた。毒龍は防御力も高いモンスターなのだが、煉も装備も凄まじい成長を遂げているため、簡単にダメージを与えることができた。
【ドラゴン種、圧倒してるのはいつ見てもヤバい】
【折角の生配信だからもっと煉くんの戦闘見たい】
【毒龍、もう少しがんばれ!】
【竜王戦とかより洗練されてる】
【苦戦すらしてない】
「『空絶』…で終わりっと。思ったより早かったな。まあ相性が良ければこんな感じか」
最後は次元流剣術で止めを刺し終了。かなり余裕を持っての討伐終了であった。
【全くハラハラしないボス戦】
【今まで毒龍のせいで神秘の森が侵入不可になってたこと忘れそうになる】
【毒が有効なら煉くんと言えど苦戦しただろうからね】
「あとは浄化作業をして帰還しようと思います。これで生配信は終了です――」
【まって!】
【最後まで見せて】
【あ、終わった】
【凄かったです!】
【終わらないで!】
煉が毒龍討伐後すぐに生配信を終了させようとするとチャット欄からまだ終わらないでコールがなされる。それを見た煉は終了ボタンを押すのを止める。
視聴者のためということもそうだが、今回の目的を考えると浄化作業も流した方が良いと思い直したからである。
「あとは浄化作業を延々とやるだけなので特に何かあるわけではありませんので興味の無い方は別のところへどうぞ」
【ありがとう!】
【ありがとうございます!】
【最後まで見てます】
【見てます!】
煉は最後まで見る宣言をし出すチャット欄を珍獣でも見るかのような視線で眺めるのだった。
―――――――――――――――
生配信を見終えたドリーは拘束していた『理想郷計画』リーダーに向き直る。
[弁明を聞こう]
[ド、ドリーお前口調が…]
[言語とは話す人物によって使い分けるものなのだろう? 私は君を見てそう理解していたが?]
[な…]
[君が私を利用していたことは理解していたが、森のために何も動いていないとは思わなかった]
[それは、ちが――]
[いや希望が君たちしかいないと思い込んでいた私が悪かったのかもしれない]
[話を聞け!]
[聞くさ。真実しか話せなくなった後の君にね]
[な、やめろ! おいドリー!!]
長時間体を拘束されていたため、ドリーの周囲に生え渡る植物たちに気が付かなかった彼は、迫ってくる植物たちにただただ呑み込まれるしかなかったのである。
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