第12話 爆速攻略

 前からミノタウロスが3匹がこちらに突進してくる。いつもなら相対するが今はそんな暇はない。


「『三連刃』」

「「ブモォー」」


 すれ違いざまに剣を振るう。足の腱を重点的に狙い機動力をそぐ。3匹全員にダメージを与えたことを確認した煉はミノタウロスを放って、先に進む。


「4階層でミノタウロスと交戦。足の腱を切断」

【了解。現在モンスターの群は上層と中層の境にいます。まだ上層の定点カメラには群は映ってません】

「もう数分で中層に到着します」

【も、もう? あ、了解!】


 効率良く攻略するため外にいる職員と通話しながら進んでいる。探索者協会がダンジョン災害の予兆情報を察知するために取り付けた定点カメラ、ここから見られる映像によって煉はより効率的に進んでいけるのだった。


 もうすぐ中層に到着というタイミングで通信が入った。


【群が中層を通過、上層に雪崩れ込んで来ています! 上層の定点カメラにも】

「了解。もう着きます。こちらからも群を確認。撃退します」

【撃退! 煉さんにはできる限りの消耗を抑えるようにと】

「最低限です。それに大階段前が塞がれていますから通るためです」


 煉が上層と中層を繋ぐ大階段付近を見るとワラワラとモンスターが出てきているのが分かる。それを間引かなければ中層に行くことも出来ない。


「剣、いやこれだけいるなら魔法からの方が良いか」


 普段煉が魔法を使わないのは、通常のモンスターなら剣で戦った方が早いからである。魔法より剣で戦った方が臨場感があるという理由もあるが。

 しかし煉は魔法も使える。特にモンスターの死骸処理のために鍛えた炎魔法は本職にも劣らない。


「煉酷の炎に焼かれ、灰塵に帰せ『煉獄炎』」

「「「グギャァァァァ!!」」」


 取り敢えず牽制に最上級炎魔法を放つ。普通なら詠唱の通りにモンスターは灰塵に帰すのだが、今回は深層級以上のモンスター群。最前列にいたモンスターを除けばそこまで深刻なダメージは負っていない。

 しかし煉獄炎は単なる目眩まし、本命は別にある。突然の炎にモンスターたちが動揺している隙に、煉は群の直前まで接近する。1匹のモンスターが煉の接近に気がつくが遅い。


「次元流剣術3節『空間断絶』」


 煉が上段に構えた剣を振り下ろす。するとモンスターの群が縦に割れた。煉はモンスターを斬ったのではない、モンスターがいる空間を斬ったのである。

 とはいえ煉の技量だとモンスターの群を全て巻き込んで斬ることはできない。せいぜい3分の1程度が限界である。そのため煉獄炎の目眩ましで接近し、斬り取る空間を縦長にすることで中層への道を作ったのだ。

 

「中層に突入。群の3分の2は放置してますのですぐに防衛地点まで到達すると思われます」

【………】

「あの!」

【はっ! すみません。了解です。防衛班には伝えておきます】

「お願いします」


 ここまではスムーズにこれたがここからは違う。氾濫の中心部に近づけば近づくほどモンスターは多く、そして強くなっていく。

 そんなことを考えていると持っている剣に違和感を覚える。


「やはり次元流剣術は武器への負担が多いな。使い続けたらどこかで壊れそうだ。…来栖さんの新作は守護者戦まで取っておくとして予備はあと2本、もつといいが」


 次元流剣術は大技であると同時に、まだ煉も完全に使いこなせている訳ではないため、どうしても武器への負担が大きくなってしまう。煉はため息をつきながら『亜空』に入っていた予備武器と交換するのだった。

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