目覚めの天井

@monochros

見知らぬ天井で目を覚ます女

前編(1)

目が覚めると、そこには見覚えのない天井があった。寝ぼけ眼をこすり、ゆっくりと起き上がる。古臭い木造の部屋にいるみたいだけど、ここはどこだろう。やけにほこりっぽい。


 ベッドのほかにはクロゼットや机、いすといった最低限の家具に、扉が2つというような質素な部屋。記憶にはない部屋だけど、どこか懐かしさを感じる。正面の扉を開いてみると、そこにはキッチンとお風呂場が、もう一つの扉を開くと長い廊下が続いている。廊下の先がどうなっているのかわからないけど、最悪この部屋だけでも一通り生活はできそう。だけど、こんな部屋で暮らしていた記憶は全くない。


 まずは、覚えていることを確認しよう。私の名前は冬枝夜葉ふゆえだよるは。年齢は20代後半。職業は…思い出せない。そしてもちろんこんな場所にいる理由もわからない。普段どんな生活をしていたのかも思い出せない。もしかしたら、思い出せないのは職業に関係しているからかもしれない。仕事が辛くてまともな生活を送れず精神を病んで、記憶障害が起こり療養している…とか。


 だとすれば、ここは病院の施設?それっぽくない気はするけど、療養中ならこの部屋から出てもいいものか悩ましい。勝手な行動は控えるべきか。でも、こんなに自由に動けるのに、出ちゃだめなら扉に鍵くらいかけるでしょ。ここにいてもどうしようもなさそうだし、外に出よう。

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