燃える星のディット

久徒をん

第1話

 宇宙から見たその星はオレンジ色に燃え続けていた。

 恒星ではなくただの惑星が燃えているのには理由があった。


 この星の名前は地球──正確には別の次元ではそう呼ばれる星だ。


 のたうち回る様に炎がうごめく星のすぐそばに小さな人工衛星が高度を保って留まっている。

 これが炎を起こす原因だ。

 人工衛星から定期的に地球へ向けて発射される特殊なレーザー光線が酸素に引火して燃え広がっていく。

 かつて大陸が一つだった時代からこの衛星は光線を照射していた。

 太陽電池と高度な技術によって作られたこの人工衛星は故障しない限りこれからも地球を燃やし続けるだろう。

 なぜこんな物が大昔から存在するのか。

 それは未来からタイムトラベルした人間が置いていったからだ。

 彼らの次元の人類は高度な文明社会を築いていたものの環境破壊と災害に疫病、そして戦争によって滅亡の道を辿っていた。

 地球の破壊を憂慮した人間達が出した選択は過去に戻って人類の存在を消す事だった。

 仮に今の人類が滅んだとしても環境破壊が深刻になった地球は二度と緑豊かな水の星に戻る事はない。

 資源ごみや化学物質や核処理のゴミが人間の手から離れて何もされずに残ったらどうなるか想像するのは容易だ。

 地球は人類の文明によって汚れて滅びるしか道はないのだ。

 過去に戻って人類の存在を否定したとしても、それは別の次元の人類がいなくなるだけで今の人類が消える事はない。

 それでも地球を人類の手で滅ぼさずに済む可能性があるならと未来に失望した一部の科学者達の手でタイムマシンと人工衛星が作られた。

 レーザー兵器を備えた人工衛星を置いて元の時代に戻った者達の世界がどうなったか定かではない。


 この世界には人類がいない地球が存在する。


 常に燃え続ける星の大地に動物や植物は生きる筈はなく荒野が広がるだけだった。

 そんな地球にも海があり生温かい水温で微生物が育ちそれを食する魚介類が生息していた。

 海の中で生命は存在した。

 ここでは独自に進化したある魚の物語を綴っていこう。

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