おっさん、VRMMOでダンジョンをつくってダラダラしたい
youさん
転機
人生には転機といえるものが度々訪れる。
入学、卒業、進学、新学期デビュー、就職、結婚、モテ期、クリスマス、バレンタイン、誕生日等々.....上げていけばかなりの数がある。
俺も最近その転機が訪れた一人だ。まぁ、良い意味と悪い意味での両方なんだけどな。
悪い意味での一つ目は、海外出張から帰った矢先、高熱により病院のベッドで2週間ダウン。ウィルス性の感染症を貰って帰ってきていたみたいだ。
二つ目、退院した翌日。久々の出社の日の朝、出社途中に車に跳ねられた。両手と右足の骨を折る重症だ。これにより約2ヶ月の入院生活。
最後の三つ目は、入院生活中に会社の後輩が見舞にやってきた時に訪れた。
「あーー、先輩。なんていうか、運がいいっすね。」
......両手が使えず、37歳にもなるいいおっさんが、看護士さんに食事や下の世話をしてもらってる俺の何処が運がいいというのか!羞恥心で爆発しそうな毎日だというのに!
「す、すんません。まぁ、病気と事故はアレっすけど......」
歯切れが悪いな。何か言いたいことでも有るなら早くしてくれ。もうすぐ昼食の時間になる。看護士さんに食事を食べさせられて貰っている姿なんて後輩に見られたくないからな。
「多分ですけど、うちの会社近いうちに潰れます。みんな何となく雰囲気で察してるのか会社の中の空気がもう最悪なんすよ。」
何を言っているんだ?
「あのどら息子がやらかしたんすよ。」
........アイツか!あの馬鹿ならやりかねない。今度は何をやった?!
「度重なる横領からの金の持ち逃げ、止めの高飛びっす。」
んん?横領?金の持ち逃げ?あのアホにそんな度胸があるのか?会社が傾くくらいの金額なんて相当だぞ。
「まぁ、なんていうか結構前から経理の姉ちゃんと組んでやりたい放題やってたみたいなんすよね。」
はぁーーー、OKわかった。これ以上は説明しなくても大丈夫だ。
俺に訪れた、悪い意味での転機。病気、事故に続いて、会社の倒産により無職になったことだ。
約3ヶ月の入院生活を終え、自宅に帰ったがやることがない。厳密には新しい職探しをしなくてはならないのだが、多少の貯えもあるので少しゆっくりしようと思ったのだ。
37歳独身アパート独り暮らし、両親と兄、弟はいるがここ10年程まともに連絡をとっていない。
これといった趣味もなく、近所付き合いもほぼないため近くに友人といえる存在もいない。
今までは仕事が忙しくて何も考えなかったが、いざ仕事がなくなると私生活はなんとも寂しいものだ。
おっと、そういえば、後輩が落ち着いたら連絡をくれと言っていたな。電話でもしてみるか。
『あっ、もしもし、先輩。連絡くれるの遅いじゃないっすか。まぁ、そんなことよりアレどうでした?』
アレ?なんのことだ?
『いやアレっすよ。手のギブスが取れたときに記念で宝くじを携帯端末から買ったじゃないっすか。』
ああ、そんなこともあったな。あまりにもしつこいから買った記憶がある。当たるかどうかもわからない宝くじのことなんか興味が無さすぎて忘れてたな。
『いやいや。三万円分も買ったんだから覚えておいてくださいよ。』
で、それがどうしたんだ?
『先週抽選が終わって当選番号が出たんすよ。』
ほう。なるほど、そういえばお前も買っていたな。こっちに聞くくらいなんだからそっちはさぞよかったんだろう?先に教えろ。
『あっ!それ聞いちゃいます?いいんですか?先にこっちの結果知って落胆しても知らないっすよ?』
ウザいな。こいつはこうなったら長いから電話越しで放置して勝手に調べてしまおう。
と、携帯は電話で使ってるから、パソコンで調べるか。
『どーしよーかなー、先輩が落胆してるの見たくないしなー』
耳元に当ててる携帯からは相変わらず後輩からの言葉が聞こえてくるが、聞き流しておこう。
パソコンを起動。えーと確かこのサイトだったよな。ログインID?記憶がいまいちぼやけてるが、いつも俺が使ってる感じので登録してるだろ。.......よし、ログイン成功。続いて当選結果を確認っと。
『言っちゃおうかなー。でもなーどうしよーかなー。』
えーと。一口三百円を三万円分だから百口ある。まぁ、当たってないだろ。
画面をスクロールしながら確認していってみよう。
んーーー、ん!三百円か。次だ次。...........おっ!三万!よし!半ば近くで元が取れた!なかなかにいい調子だ。
『おーい、せんぱーい。無視しないでくださいよー。』
ああ、すまんすまん。当選結果みてたところだ。今のところ三万三百円当たったぞ。
『ふっ。自分の当選額に比べたら端金っすね。』
そういえばこの宝くじの一等っていくらなんだ?
『二十五億っす。前後賞含めると三十五億にもなる超絶高額な当選金が貰える宝くじっすよ。』
ほー。三十五億ねー。当たった奴は人生変わるな。で、お前はいくら当たったんだ?
『二億っす。はっ!スルッと言ってしまったじゃないっすか!』
マジか!スゲーな後輩君。少しお高いご飯でもご馳走してくれないかな?
『いやー、残念ながら自分もうそっちにいないんすよね。』
どういうことだ?
『新しい職探し面倒だったんで実家に帰ったんすよ。』
確か田舎で農業やってるんだったよな。
『まぁ、一人っ子だったんで家業を継ぐのが少し早くなっただけなんすけどね。』
無職でフラフラするよりはましだろ。ところで、その二億はなんに使うか決まってんのか?
『決まってるっすよ。実家の建て直しと。農機具の新調、ビニールハウスを最新のコンピューター管理が出きるものを複数建てたらほとんど飛んでいくっす。』
そうか、まあ、健全な使い道だな。悪い大人が近づいてくる前に使ってしまうのが一番だ。
『うっす。親にも感謝されたっす。って、こっちの話はいいんすよ、先輩の結果はどうだったんすか?三万三百円で終わりってことはないっすよね?』
あー、駄目だな。後15口しか残ってないから望み薄だな。
『いやいや、最近悪いことばかりだった先輩にはいいことが有るかもしれないっすよ。』
励ましは嬉しいが、人生そんなに上手く行くわけ.........んっ!?
.............................................................
『おーい、せんぱーい?どうしたんすかーパソコンの電源でも落ちたんすかー?』
おい、後輩。お前の家の近くに空き家は有るか?
『え?ええーと。確かあったと思うっすけど。急にどうしたんすか?』
察しろ、今からその家見に行くから持ち主に話通しておいてくれ。
人生最大の転機が訪れた瞬間だった。もちろん良い意味でだ。
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