逝きたい僕と生かせたい幽霊少女

まるちず

プロローグ

激しく岩に打ちつけられる波の音を聞きながら、こちらの気持ちも知らずに好き勝手に吹く風をかき分け歩いていく


鉛のように重い足取りで真っ暗な道をただただ前に進んでいく。まだ梅雨も開けきっていないジメジメした空気が肌に不快感を与える。


「最後の最後まで嫌な気分になるな・・・・・・」


嫌な言葉は口に出したくないものだが、こうも不快感が強いと勝手に出てくる。


いつもなら暫くの間ダラダラと嫌な気分が晴れないが、あと少しで終わりだと思えばまあいいかと思える。


遠く聞こえたいた波の音がはっきりと聞こえだし、目的地であった高所恐怖症の人は耐えられないであろう絶壁についた。


潮の香りが主張強めに鼻腔を刺激する。崖下を恐る恐る除いてみると、黒の絵の具をぶちまけたように真っ暗だった。


一度懐中電灯を切り周りを見渡してみると、月も顔を出していないせいかどちらが前か後ろかわからなくなる。


まるで現在までの自分のように、どこに向かえばいいかわからなくなるなるように先が見えない。


だが今日は今までとは違い自分で決断してここまで来た。そう、自分で決断して終わらせに来たのだ。


俺の人生を.......


この昼間なら絶景であろう場所は、俺の地元にある自殺スポットらしい。このクソ高いこの絶壁から飛び降りれば、確かに死ねるだろうなと歩き疲れた頭で思った。


俺はカバンから準備してきた遺書を取り出して、風で飛ばされないように靴を重しにして置いた。


遺書にはあのゴミ共への恨みつらみを書き綴ってやった。この遺書を見たときアイツラはどんな顔をするのだろうか。アイツラのことだ、どうせ馬鹿にして笑うのだろう。


想像しただけで無性に胸がズッシリと重く感じ苦しくなる。俺は思いっきり息を吸い込んで、腹の底から喉が弾け飛ぶくらい叫んだ。


「あああああああああああ!!! ぜってえええ許さねえ!!アイツラ全員呪ってやる!!!」


叫び終わった俺は普段出さないような大きな声出して疲れた体を、思いっきり地面に投げ出し横になった。


曇っているせいで星の一粒さえ見えない空を仰ぐ。思いっきり叫んでみたが胸にヘドロが詰まったような感覚は消えない。


グダグダしていても仕方がないので、俺は気合を入れて体を起き上がらせ崖の端まで足を動かした。


崖下はを眺めここを飛び降りれば全て終わりにできると自分に言い聞かせる。この高さなら即死できるだろうが、もし即死でなかったらと考えると一歩踏み出すことができない。


ここで死んだ人たちは一体何を思って死んでしまったのだろうか、死ぬことで楽になれる、もしくは色々後悔したのかもしれない。


「・・・ちくしょうッッ! 死ぬのがめちゃくちゃ怖い」


覚悟して来たはずだった自分で決断して来たはずだった。なのに、あと一歩進むことすらできない。

 これじゃいつもと同じではないか。今日は今までとは違うと決めたのではないのか、


俺は思考に蓋をして目を閉じ覚悟を決めた。もう何も考えないただ足を一歩踏みだそうとしたとき、


「ねえ、聞こえる?」

 突然正面から女性とは言えない少女を残した透き通るように通る声が聞こえた。


「えっ! うわあ!」

 俺は思わぬ声に驚き、体制を崩し後ろによろけて倒れてしまった。

 

 お尻に鈍い痛みを感じながら、俺は閉じていた目を開いた。そこには何ともタイミングよく月明かりに照らされ、肩までかかる夜よりも暗い漆黒の髪を靡かせながら、宝石のような深い緑の瞳でこちらを女の子がいた。


相手もこちらの様子に驚いたのか、大きな目を丸くしながらこちらを見ている。


「・・・俺以外に人がいたのか」


思わず出た自分の言葉にはっとする。そんなはずはないと、この周辺には人は誰一人いなかった。それに、こんな夜更けに制服姿の女の子がなんでいるんだ。


俺がパニック担っている頭で考え事をしている最中に、女の子は何やら嬉しそうな顔をして一言オレに向かって言った。


「ねえ、きみさ。 死ぬほどつらいことある?」


これが俺と彼女とのファーストコンタクトだった。







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