魔物使いの戦闘員

デルタイオン

第1話 転生者

早速だが、俺は死んだ………らしい。


俺は残念な事に転移ではなく転生らしい。


まあ、それはしょうがない。知らない身体なんてのは怖いが、自分の身体として扱えるまで訓練しかない。


トラック転生とかではなく、本当に悲劇的なものだった。


道を歩いていたら劣化した看板が俺の頭上に落ちてきたのだ。


案外痛みというのは無く、気絶しそうな状態に近かった。


身体は動かないし、寝たら死ぬと思うけど何故か思考が働かない。そんな状態だった。


まあ、あんな死に方だが、痛み無く死ねたのは良かった。企業秘密も死んだ今となってはどうでもいい。


部下には世話になった。挨拶出来ず残念だったが、上司からの最後の挨拶なんて邪魔者が居なくなる程度にしか思ってなかっただろう。そう考えると別に良いやって思う。


しかし、赤ん坊の時にこんな思考があったらどうしようか。と悩んでたが、その頃の記憶無くいつの間にか3歳となった。


そして俺は異世界の厳しさを知った。


精神と肉体が一致していた時だったのが悪かったのか。そもそもこんな生物が存在しているから悪かったのか。


俺は、両親が食い殺される所を黙って見ているしかなかった。


3歳になったからなんだ?魔法も、武器も使えない。走っても転ぶ。走る以前に俺の足は竦んで力が入らない。


どうすれば良かった?どうも出来ず、何も言えず、俺は野原でオオカミに食い殺されて死ぬ。


お前も両親と同じように悲鳴を上げ、苦痛に顔を歪ませ死ぬのだと目の前で教えられた後に。


まずは足から。次に腕を。その次に胴体をむさぼり喉を噛み千切り絶命する。


「ぁ……」


こちらを向いたオオカミと目が合う。


血走り、毛は返り血に染まり歯茎を露出させ威嚇している。


アニメで悲鳴を上げながら死ぬモブと同じように死ぬ。


ヒロインのように後を継ぐ者すら探せずに死ぬ。


逃げなければ……


折れる足をなんとか立たせ引きずりながら逃げる。


後ろから走ってくる音が聞こえる。段々と近づいてきている。


こんな時。主人公が居るなら助けてくれるだろうか?


いや……違う。


「助けろよ主人公〜!?」


これが最後の言葉となるともう哀れとしか思えないのだろう。


俺は最後の力を振り絞って声を張り上げる。


一瞬、俺が主人公のような感じがして足に全力が伝わり速く走った気がした。


だが、現実は非情だ。生物の肉体の関係上オオカミに勝てる生身は存在せず、俺は背中を引き裂かれた痛みで気絶した。


主人公でも、モブでも無い。


俺はただの現実の人だったんだ。


ただの男の子。現実はそんなもんだ。


不運は必ず不平等にやってくる。死神の見せる走馬灯はそれを証明してくれた。


3度目を超えて4度目があっても5度目は存在しない。


結果だ……これが結果なんだ……

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