迷探偵神風 彪哉の怪奇事件録

大猩猩和

第零章 就活編

第1話 神風探偵事務所へ

 20XX年、某北の国により発射された核弾頭ミサイルが日本本土に命中したことで、日本と某北の国との間で戦争が勃発した。


 この戦争には多くの国が加勢し、資本主義の国はもちろん、国連に所属している多くの国が日本に加勢し、共産主義を掲げている国が北の国に加勢した。


 そして、この戦争は日本と北の国との間だけでなく、日本に味方する勢力と北の国に味方する勢力の国々との間でも戦争が勃発し、世界は第三次世界大戦へと突入したのだった。


 第三次世界大戦は熾烈を極めたのだが、資本主義側である日本に加勢する国の方が多かったため、次第に社会主義側であった北の国側はその物量差で押されていった。


 そして、北の国が日本率いる連合国に陥落させられ、社会主義国側の大将を張っていた中の国が連合国に包囲されてしまい、あと少しで陥落するところまで来ていた。


 このまま中の国は日本率いる連合国によって陥落してしまうのかと思われた時、中の国のトップであった人物が共倒れを狙い、現在発射することが出来る核弾頭ミサイルを連合国の国々に向けて発射したのだった。


 世界中へ向けて核弾頭ミサイルは放たれたのだが、中の国の多くの基地は連合国に抑えられていたので、世界が滅亡してしまうということはなかった。


 しかし、それでも多くの核弾頭ミサイルが世界中の国々に命中し、中の国の核弾頭ミサイルによって多くの人が命を落としてしまった。


 特に中の国に近く、第三次世界大戦のきっかけとなった日本には多くの核弾頭ミサイルが命中し、多くの国民が核弾頭ミサイルによる爆発によって命を落としてしまった。


 他にも核弾頭ミサイルによる放射能汚染による死者数も恐ろしく、日本の国土のうち約四割が放射能汚染により、生物が住めない土地へとなってしまった。


 だが、強力な放射能をその身に受けながらも生き残った者たちがいた。


 その者たちは放射能により、突然変異を起こし、超能力と放射能に対する強い耐性を獲得した。


 そして、世界ではこの特殊能力に目覚めた者たちのことを『覚者かくじゃ』と呼んでいた。


 そんな波乱の世から100年の月日が経った現在、第三次世界大戦による被害を最も受けた国であった日本も回復を見せ始めていた。


 第三次世界大戦が核よる放射能汚染が酷かった観点から、世界では放射能汚染に対する技術が著しく発展しており、国土の四割が放射能汚染で生物が住めない土地へとなっていた日本もこの技術の発展により、放射能汚染された土地を二割にまで減らすことが出来ていた。


 一度は大きな被害により、政府が崩壊し、国とは呼べないところまで落ちていたが、現在では各国の支援により、新たな政府が立ち上げられ、秩序も取り戻しつつあった。


 しかし、日本は大きな被害を受けたのに加え、一度政府が崩壊したこともあり、戦前のような治安の良さはなく、世界で最も治安が悪い国とされていた。


 そんな最も治安が悪い国と名高い日本の中でも他とは桁違いに治安が悪いスラム街があった。


 そのスラム街の名はあいぎり地区。


 かつて、大阪の西成と呼ばれていた土地にある超巨大スラム街である。


 この土地は基本的に全ての建物が違法建築であり、ドラッグの売買や人身売買、武器の違法販売など、この土地では何でも行われていた。


 そのためか、マフィアや超大型の犯罪組織など、危険な団体が数多く拠点を構えている。


 そんな危険な土地で探偵事務所を構えている探偵がいた。


 その探偵の名は神風 彪哉かみかぜひゅうや


 彼は覚者にまつわる事件や全国各地で噂されている都市伝説、不可解な未解決事件や怪奇事件などを主に取り扱っている特殊な探偵であった。


 そんな神風の探偵事務所に向かっている者がいた。


「えっと、送られてきた住所によると、この辺りに事務所があるはずなんだけど、この辺りは違法建築が多すぎて、地図が見にくいな...... 」


 この人物の名は荒鉄 士郎あらがねしろう


 身長は170センチと平均的な身長であり、顔は整ってはいるが、イケメンでもブサイクでもない平均的な顔である。


 髪は黒色であり、スタイルも一般的などこにでもいる日本人であった。


 そんな彼が神風の探偵事務所に向かっているその理由は面接を受けるためである。


 士郎はあいぎり地区の近くにあるスラム街で中学までは暮らしており、士郎の家は貧乏であるのに加え、言うほど優秀な人物ではなく、平凡な人物であったため、中学を卒業すると同時に就職し、独り立ちしたのだった。


 しかし、彼が今まで就職してきた会社は全て倒産してしまい、現在18歳になる彼は少し前まで働いていた会社が倒産したことで無職なり、働き口を探していた。


 そんな途方に暮れていた士郎は電柱に貼っていたとある紙を見つけた。


 それは探偵の助手を募集している張り紙であった。


 その張り紙を見た士郎は迷わず携帯を取り出し、その張り紙に書かれている電話番号にかけた。


 そして、現在に至る。


「おっ?あの建物っぽいな」


 士郎は携帯の地図を見ながら伝えられた住所へ向かっていると、それらしき建物が見えてきた。


 その建物は周りに立っている建物と比べてだいぶボロボロの5階建ての建物であった。


 一階は士郎の地元でもよく見かけていた有名なコンビニであった。


「実家にいる時から思ってたけど、なんで、ここのコンビニグループはスラム街によく店を構えてるんだろう?普通に犯罪とかに巻き込まれそうで、危ないと思うんだけどな......まあ、俺たちみたいなスラム街にしか住めない貧困層は助かってるから、そんなに気にしなくていいか」


 士郎はよくスラム街で見かけるコンビニのことを考えながら建物に近づいていき、外付けの階段の近くにあるポストを見てみると、そこには助手の募集をかけていた神風探偵事務所の文字があった。


 このポストによると、神風探偵事務所はこの建物の二階にあるようであった。


 神風探偵事務所の文字を見た士郎は危険な土地で何とか目的地にたどり着けたことに安心すると同時に、これから受ける面接に緊張し始めた。


 そうして、士郎は緊張を胸に神風探偵事務所がある二階へ向かったのだった。


 

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