2話 これまでとこれから②〈第二部〉

注意書き


・この作品はBL作品になります。


・第一部に比べてBL要素強めです。この先も強くなっていくと思います。


・書いてる人がかなりのオタクなので何かに似てるなんて箇所が多々あるかもしれませんが温かい目で見ていただけたらと思います。


・この先暴力表現が入ってくる場合もございます。


・主人公がかなり不憫ですので苦手な方は読むのをお控え下さい。


・実在する建物、歴史とはなんの関係もございません。


・少しでも楽しんでいただけたら幸いです。





___________________________________________

















 結局シキは九導達から応援要請が入り、もちろん最初は拒否したが、響に頼まれて渋々と言ったようにそこへ行った。

 だから響と奏と那珂の3人だった。




 3人とも1日オフを取るのは難しく、短い時間しか予定を合わせられなかったこともあり、お昼ご飯を食べて、少しだけウィンドウショッピングをしてその日はお開きになった。


「家まで送ってやるよ」


 そう言った那珂に響はお言葉に甘えることにした。

 響のマンションまでは歩けない距離でもないので直ぐに到着した。


「すっごく名残惜しいけど、またね。今日は楽しかった」


 奏がドアを開けて笑顔でそう言った。


「うん。僕も楽しかった。誘ってくれてありがとう。那珂さんも送ってくれてありがとうございます」


 響はそう言って車を降りる。


「普段も運転手してるからそんなに畏らなくてもいいさ。俺も楽しかったぜ、また行こうな」


 那珂も奏ももちろん響と離れたくはないけれど、昼も夜もとなるとシキの機嫌を損ねるだろうと考えたのだ。それで次誘えなくなる方が頂けない。


「じゃ、また本部でね」


 響がそう言えば2人は去って行った。






 仕事の引き継ぎ、案件の書類、要請申請、報告、何かと理由があれば九導らの拠点に行かなければならない。元の現代陰陽連の上が解体された今、実質その実権を握っているのは九導らである。

 そしてもちろん響も正式にそこへ入った。

 皆が響にもう働かなくていいと言ったが、シキ達が居なくなった頃の響は首を縦には振らなかった。その時は自分が神になれば“ナニカ”は永久的に発生しなかったのにという負い目も感じていた。

 誰もがそれは響のせいではないと思っているが。本人は働き続ける。それが存在価値の証明の為だと気付いたのは戻ってきたシキだった。

 シキは響がまだ働いていると聞いて驚き、九導達にかけ合った。しかし他でもない本人の望みなのだと聞いて、危ないものには行かせられないと反対した。

 それでも頑なだった響にシキは約束を設けたのだ。



1、戦闘が必要だと最初から分かっている場合の案件には行かせない。


2、殺しが必要なものは勿論、対人のものにも行かせない。


3、戦闘が必要になると分かった時点でシキ達の誰かに必ず連絡を入れること。


4、自分の身の安全を第一に考えて、必ず生きて帰ってくること。


5、シキ達が同行すると言えば拒まないこと。



 これらを九導らと響本人に約束させた。破った場合、場合によっては二度と行かせないと言う条件で。

 それでもやはりシキもダイラも、ミョウもチョウも反対であった。だがその方が響が良いと言うなら誰も文句は言えない。それに響は賢くどんな時でも冷静。その能力はかわれている。戦闘が出来なくても響の知恵や力は必要だ。それを九導らが分かっていて、本人も知っている。






_____________________






 響が那珂の車から降りてマンションに入ろうとした時、タイミングよくスマホが鳴った。


「もしもし?」


 電話の相手は憐だ。


〈響? 今奏から解散したって連絡もらったんだけど、この後少し空いてる?〉


 響は今日1日休みをとっているので予定はない。


「空いてるよ」

〈お! ご飯食べに行かない? もう食べちゃった?〉


 奏達とは昼ごはんは食べたが夜ご飯は食べていなかった。おそらくダイラもまだ作ってないだろう。


「ううん。まだ。僕もお腹空いてたから誘ってくれて嬉しい」


 時刻は夕方の5時半。帰るには早すぎる時間だった。

 それに響はちょうど憐に相談したい事もあった。


〈じゃあちょうど近くでの案件帰りだからそのまま響のマンション向かうわ。5分くらいで着く〉

「分かった。待ってるね」


 そう言って電話を切る。

 そして次に響が電話をかけたのはダイラだった。もう目の前まで来ているから部屋まで上がった方が早いが、万が一憐を待たせる事になるのも嫌だった。


〈響か? どうした?〉


 響から電話をかけるのは珍しい。ダイラの声色は少しだけ心配そうだ。


「ご飯ってもう準備してる?」

〈いや、まだじゃが〉

「今日外で晩御飯も食べてきていいかな?」

〈構わんよ。その連絡か?〉

「うん」

〈響はしっかりしてて偉いのう〉


 その後一言二言交わして電話は終わった。

 響は時々、ダイラが自分をすごく小さな子供だと思ってるんじゃないかと思う時がある。

 一方ダイラは奏達とそのまま食べに行くと思っていて、後にシキに聞かれた時にそう答える。それが小さな勘違いを呼ぶとも知らずに。




 ダイラとの電話が終わったタイミングで憐が到着した。


「お疲れ様、憐」

「おう。ありがとな。何か食いたいもんある?」


 2人は並んで歩き出して何を食べるか話し合う。


「うーん。何でもいいけど、憐は?」

「俺は米の気分かなぁ」

「じゃあ前言ってた和食屋に行こうよ」

「お! いいなぁそれ」


 行き先は決まった。

 ここからなら歩いても遠くない場所だ。




 お店に到着して2人は座敷の席に向かい合って座った。

 飲み物と料理を注文して運ばれて来るのを待つ。憐は少しだけお酒を飲むようだった。響は普段お酒は好まないがこのお店が美味しいお酒も置いているという事で憐と同じのを頼んでいた。


「美味いなこの酒」


 軽く乾杯をしてから一口飲んで憐は言った。


「憐はなんでも美味いって言うじゃん」


 響が笑ってそう返した。


「そうだっけか? でもそれは響もだろ」


 憐も笑ってそう返す。

 食事が運ばれてきて、美味しいディナーが始まった。お酒も入り、2人ともいつもより饒舌にお喋りを楽しむ。


「あ、そうそう。憐に相談があるんだけど」


 話しやすくなったタイミングで響が言った。


「ん? なんだ?」


 珍しいなと思いながら憐は聞く体制をとる。


「シキにねプレゼントしたくて、ほら憐ってセンスいいじゃない? 今日の格好もお洒落だし」


 憐はシンプルなお洒落だ。

 地味すぎず、派手すぎず、清潔感の纏うお洒落。大人ぽいとも言う。

 奏や那珂もお洒落ではあるが、シキの好みとはズレる。


「響もお洒落だと思うけどな。今日の服もちゃんと色が統一されてるし」

「あー僕は無難なのを選んでるだけだよ。買って来るのはシキだしね」


 それでも組み合わせがしっかりしているのは響もセンスが悪くない証拠だとは思うが、何を言っても響は納得しなさそうなので憐は思うだけにとどめた。


「でもなんでプレゼント? 誕生日か何かなのか?」

「誕生日は知らないんだよね。本人達もわからないって言うし。だから出会った日をそれっぽくしようかなって」


 今までそんなのに拘ったことはなかった。シキ達が祝ってくれた14歳の誕生日以外、響にとって特別な日などなかった。

 誰もが、響のバースデーよりも実千流の命日という認識だったから。

 だけどいつも色々してくれて気にかけてくれて、何より大事な家族だから何か形に残るものを返したいと思っていたのだ。


「それはいいなぁ。きっと喜ぶと思う。んで、それを一緒に選べばいいのか?」

「うん。そう。面倒だったら全然断ってくれていいんだけど」


 響が遠慮気味にそう言った。


「面倒だなんて思わないよ。普通に楽しそうだしな」

「ほんと? ありがとう。ダイラ達と出会った日も近いからそっちも買いたいと思ってるんだけど、流石に嫌?」

「そんなに遠慮しなくていい。友達だろ」


 憐はそう言って笑った。

 響も安堵して笑う。


「本当に助かる。ありがとう」

「この時間ならまだ駅前のお店とかは空いてると思う。この後行ってみるか?」

「いいの? 明日早くない? 大丈夫?」

「明日午前はオフだから大丈夫」

「そっか。じゃあ行こう」

「おう。なんならお店見た後どっかで少しだけ飲むか?」


 いつもの響なら断っていた可能性が高い。だが今日はもう既にお酒も入っていて、要するにいい感じなのだ。


「うん。いいね。そうしよう」

「今日はいい日だなぁ」


 憐が言った言葉の意味を響は分からなかったが憐が楽しそうならいいかと言う考えで、店員さんにお会計をお願いする。

 そうして待っている間に響はダイラにメールを入れた。

 帰りは遅くなると思うから先に寝ててという旨を伝えて、ダイラからは了解のメールが届いたのを見て閉じた。


「じゃ、行くか」


 お会計を済ませて憐がそう言った。


「いくらだった?」

「いいよ。俺が誘ったんだし」

「え? でも悪いよ」

「ほら、飲みにも行くしさ。その時で」


 憐がそう言うなら、と響は開いた財布を渋々といった感じに閉じた。

 2人は和食屋を後にして駅前を歩く。

 何店舗か見て回って、憐にも意見を聞きながら、かなり時間はかけたがなんとか4人分のプレゼントが買えた。

 そして話していた通り、2人は静かめなBARに入った。

 よく見れば見覚えのあるお店だった。

 そこは雅と憐の件を話した時に来ていたお店だ。昼間はコーヒーショップだが、夜はBARらしい。


「響? 具合悪いか? 酔った?」

「…ううん。このお店来たことあるなーって」

「本当か? 実はこのお店雅さん達に教えてもらったんだよ」

「うん。僕も雅さんと話す時にここに来たよ」


 いつもなら絶対言わないことだった。

 だけど今はお酒が入って口が軽くなっている。

 響の話に、憐は何の事かを察して少しだけ眉を下げた。


「そうか。店変えるか?」

「あ、いや、ごめん。大丈夫、暗くするつもりはなくて」


 響が焦って弁明する。


「あー違う違う。あの時は響も子供だったのに一生懸命守ってくれたんだなって思うとさ、なんていうか、すごいなって」

「何もすごくないよ」


 響は自分のことも、あの時の判断も、すごいなんて思ったことはなかった。だってあれは結局自分では守りきれないから雅さん達にお願いしたということ。何もすごくもなければ、守れてもいない。響はそう考えている。


「すごいよ。あの時冷静にあの判断ができるのはすごいことなんだよ。俺はあんなに取り乱したのにさ」

「憐が取り乱したのは優しいからだよ」


 響はお酒の飲むペースが早くなる。


「響はすごいよ。それとも、あの時離れても何ともないぐらい、響にとって俺の存在は大きくなかった?」


 憐は自分が意地の悪い言い方をしている自覚があった。


「えっ、そんなわけないじゃん…。そんなわけ、ないよ……」


 響は段々と苦しくなる。

 この場所も。あの時の話も。全てが響をあの頃に引き戻そうとする。

 憐は響にとって初めてできた友達だった。初めての同年代の同業者。同じ世界で生きている少年。だと思っていた。

 でも憐も、奏も響から見たら綺麗すぎる眩しすぎる存在だった。

 響は表情を曇らせる。

 それは今にも泣きそうにも憐には見えた。


「悪いっ、そんなわけないよな。響は大事だからあんなに守ってくれたんだよな。分かってるよ。ごめんな、意地悪な言い方して」


 憐は焦っている。

 奏の存在にも、那珂の存在にも、何よりシキの存在に。

 憐は響が特別な意味で好きだから。

 そして奏や那珂、シキが響を同じように思っているのも知っているから。

 ただ、今は伝えるべきではないと皆が思っている。今はただ響に平穏を暮らしてほしいから。


「でもたしかに、あのときの僕は周りからはそう見えてたのかも。冷たい人間って。実際優しくはないしね」


 響は当たり前のようにそう言って酒を煽った。ほとんど空になった響のグラスを憐は手で押さえた。


「それこそありえねぇな。響は誰よりも優しいよ」


 響は憐の顔を見つめる。

 どうして自分の友人達は皆優しいのだろうか。そしてそれを自分に向けてくるのはどうしてだろうか。響には考えても分からなかった。


「ありがと」


 流したとも、素直に納得したとも受け取れるような、曖昧な返事だった。


「響飲むペース早くないか?」


 憐は話題を変えた。


「…そうかな?」


 響の返事は段々ゆったりとしていく。


「響はさ、初めて飲んだのいつだった?」


 響はアルコールに浮かされている頭で考えた。


「うーん…、15、の時だったか、なぁ……」


 どこか上機嫌にも見える響は思い出を見つめているようにも見える。


「まじか。意外だな。お前がそんな早くから飲むなんて」


 響は空になったグラスを見て新しいお酒を注文した。


「ふふ、意外? いがいかぁ…」


 楽しそうに笑う響に憐も頬が緩む。普段響はあまり饒舌にならないし、自分の話もしない。笑いながら話すなど、珍しい事だった。

 運ばれてきたお酒を響は一口飲んだ。


「一人で飲んだのか?」


 15歳が一人でお酒を飲むのは危ない。憐は少し心配になった。


「…ん…? うん。でもほんとはね…、シキ達と、飲む予定だったんだぁ」


 楽しそうに話す響とは裏腹に憐は自分の酔いが冷めていくのを感じた。


「僕のね、生まれ年のワインなんだって、……ダイラが、ずぅーっと大事に、とってたんだけどね……」


 そして一瞬、響の笑みは憂いを帯びた。


「……いなくなっちゃったから……」


 そう言った響の表情はどこか泣きそうだった。

 憐は一人でお酒を飲む響を想像して泣きたくなった。あまりに健気で寂しそうで、そりゃあ15歳の少年でも酒に溺れたくなるだろう。


「戻ってきてくれて、…本当に嬉しい」


 響は心底幸せそうな表情でそう言った。


「あ、でもシキ達には内緒ね…、怒られちゃうから」


 まるで悪戯をした子供のような笑顔で言う響に憐は頷いた。


「俺たちだけの秘密な」


 そう言うと響はまた笑うのだ。

 シキ達が知ったところで怒りはしないだろう。むしろ謝る姿すら浮かぶ。それでも響が知られたくないと言うなら、黙ってるのが良いのだろうと憐は思った。


 その時だった。響の携帯が着信を知らせた。

 響は覚束ない手元で鳴り響くそれを取り出し、切った。その光景に憐は驚きを隠せない。この時間にかけてくるのだからきっと家族の誰かだろう。響が切るなんて予想していなかったのだ。


「家族の誰かじゃないのか? 出なくていいのか?」


 憐が聞くと響はまたグラスに手を伸ばす。


「うん…。今はシキの声聞きたくない」


 どうやら着信の相手はシキだったらしい。


「…どうして?」

「………今はだめな気がするから…」


 憐からしてみればよく分からない返答だが、本人がそう言うなら無理に進めるのも良くないだろう。


「でも心配してるんじゃないか? 時間も遅いし、そろそろ帰る?」

「ううん…。もうちょっとだけ憐と飲みたい」


 好きな子からそう言われて、ダメだ帰ろうと言える男がいるのだろうか。少なくても憐は言えない側の男だった。


「そうだな。もう少しだけ飲むか」


 そう言って憐も新しいお酒を注文した。


「憐はさ、どうやって過ごしてた?」


 再会してからもずっと聞けなかった。聞く余裕が響にはなかった。シキ達が戻ってきてやっと響は普通の生活を手に入れたから。


「待遇は良くなったよ。九導さん達の所はしっかりしてるから、子供だけでの案件とかもなかったし、でもちゃんと鍛えてもらえたから」

「そっか。強くなったんだね」


 響は聞いて良かったと思った。自分と一緒にいた頃の憐はバックもなく、子供なのに危険な案件に行かされていたから。もちろん出来るだけそういったのは自分に回すようにしていたが、それでも守りきれない時もある。

 あの時はまだ知らなかったが、奏のように。


「でも、思い出して一番楽しかった記憶は響と一緒にいた時だった。案件ばっかで忙しかったけどさ、一緒にご飯作ったりするの楽しかった」


 響は自分は与えられてばかりだと思っている。

 ご飯の美味しさと楽しさを教えてくれたのが奏なら、憐は誰かと一緒にいる時間の心地よさを教えてくれた友達だった。


「…僕も、楽しかったよ」

「だから、ありがとな。守ってくれてたのもだけど、俺と友達になってくれて」


 響はやはり、自分は恵まれていると思うのだ。

 こんなに素敵な友人がいるのだから。


「そろそろ、眠くなってきたね」

「そうだなぁ。そろそろ帰るか」


 名残惜しい気持ちも確かにあるが、時刻は4時前。帰るにはちょうどいい時間帯だろう。

 2人はお会計をして外に出た。


「お酒飲んだ後だと涼しいねぇ」


 普段なら肌寒い時間もほてった体には丁度いいぐらいだった。

 歩いて帰ると言う響をマンションまで送ってからタクシーに乗ろうと考えて憐も一緒に歩き出した。

 歩き始めて数秒。響は後ろから腕を掴まれた。


「っ……だ、…えっ、シキ…?」


 誰?と聞こうとして、でも振り返って見えた姿に響は驚きが隠せない。長身で、でもしっかりと筋肉もあって、髪が長く、毛先にかけて青 みがかった独特な髪色。

 そんな人物は一人しかいない。


「響。何してるの?」


 シキの声はいつもよりずっと低かった。


「えっと…、シキこそ、なんでここに?」


 掴まれた腕はそのまま。

 シキは横目で憐を見て、その腕を一度離した。


「こんばんは、憐」

「こんばんは」


 イマイチ状況を理解できていない憐だが、なんとか挨拶を返す。


「これはもうお開きであってる?」

「一応。響のマンションまで歩こうかなって思ってたところです」

「そう。じゃあ僕が響と帰るから、憐はタクシー捕まえて」

「分かりました」


 憐は空気の読める男だ。

 本当なら何か響に助け舟を出した方が良いんだろうが、自分が下手に庇えば要らぬ誤解を招きそうで憐は素直に帰る事にした。


「じゃあ響、今日はありがとな。楽しかった」

「うん、僕も楽しかったよ。ありがとね。買い物の件も」

「気おつけて帰れな」

「うん。憐も」


 それだけ交わして憐はあっさりタクシーを捕まえて乗って行った。


「響、僕たちも帰ろうか」


 そう言ってシキは再度響の手首を掴んで歩き出した。

 いつもは手を繋いでくれるのにと響は思う。

 でも見て明らかにシキは怒っている。きっと電話を無視した件も怒ってるのだろう。自分に非がある以上響は強くは出れなかった。

 大人しくシキに腕を引かれて、帰路を歩く。

 来た時はキラキラして見えた景色も、シキが怒っているという不安で楽しめやしない。

 響はこの後どうしたらいいんだろう。もしかしたら呆れてしまっただろうか。と不安を抱きながらもシキに腕を引かれる。

 さして遠くもない家について、衣服を着替えて、シキは部屋の中に響を半ば強引に連れて行き、ベッドへ誘導した。

 そしてベッドの上で響は壁際に追い込まれている。

 向かい合って座るような、でも確実に圧のあるシキの目が響を見据えていた。








「し、き…?」


「……付き合ってるの?」


「え?」


「憐と付き合ってるの?」


 シキが何故そんな事を聞くのか分からない。

 シキが怒っているのと関係があるのは明らかなのに、シキは怒ると表情が読めなくて、まるで分からない。

 ただ、なんとなく、その瞳で見られるのはすごく悲しいような気がした。











to be continued…

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