第21話 配信世界の散歩1


 朝です。気持ちの良いとは言い難い朝です。まだ目眩が残ってるような……気の所為のような……船酔いみたいなものかな?

 今日は配信をしないことにして、この世界を見て回ってみようと思うの。地に足をつけて歩いてみれば平衡感覚もしっかりすると思うからね。

 そういえば、この世界に来てから、まだ自分の配信劇場とうみちゃんの所しか行ってないんだよ……

 この世界を知るためにも散歩してみよう。


 自分の配信劇場のエントランスから外へ出ると、周りは草原だった。爽やかな風が吹いていて、散歩していてとても気持ちがいい。ここは素晴らしい世界だね。

 振り返ると、わたしの劇場の全景が見える。草原の中にポツンと建った西洋風──赤と白のレンガが使われた円形の劇場で、レトロ感があってとってもオシャレに見える。

 こんな劇場で配信出来てるなんて、とっても嬉しい!

 この見た目なのは、わたしの好みが反映されてるのからかな? だったら尚のこと嬉しいな。


 劇場の入口から足元には石畳が敷かれていて、ほかの劇場へと道が繋がっているみたい。

 周りには小さな劇場がいくつも建っているけど、わたしの劇場から続く石畳は、途中でアスファルトになったり土むき出しになったり、ほかの劇場に合わせてデザインが変わるみたい。

 カラフルな樹脂ブロックを組み合わせたおもちゃみたいなデザインだったり、コンクリート製のモダン建築風だったり、劇場の周りが森みたいになってたり、色んなデザインの劇場があるから、散歩して見て回っているだけでも面白い!

 野外美術館みたいで楽しい〜


「人それぞれで飽きないな〜」


 独り言を呟きながら散策を続けていると、遠くにちぐはぐな印象を受ける劇場を見付けた。

 入口は大きく立派な門が設置されていて、前から見ると凄い建物のように見えるのに、正面から少しズレると、建物本体は劇場と言うより個人宅みたいな小さいものになっている。

 異様に門だけ大きくて、とてもアンバランスなデザインに見えた。


「どんな人が配信してるんだろ?」


 気になってしまったものの、人の家という感じがしたので入りづらい……とりあえず外周をぐるりと回ってみる。

 じーっと見つめながら、中が見えるところがないか探していると……何となく中身が見えるような気がしてきた!

 そして、わたしの視界の真ん中だけ、双眼鏡を覗いているみたいに、壁が取り払われて中の様子が見えるようになってしまった……

 わたしはこの世界で透視能力まで得てしまったみたい……

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