第12話 配信の壺6
腕を振り下ろしてハンマーを叩き付け、その勢いのまま身体を浮かせて斜め前へと飛ばすように身体を進める。限界まで腕を伸ばしてハンマーの先端を突起に引っ掛け、飛び上がりながら更に腕を引いて自分を引き上げていく。
この基本の動きで進めながら、狭い場所では左右交互に引っ掛けて引っ張り上げることを繰り返して上へ上へと上がる。ハンマーを思い切り回転させて瓦礫にぶつかる寸前で力を弱め、先端を引っかけ、持ち上がったと思ったところですぐに腕を引いて、滑りやすい斜面もグリップを殺さず飛ぶように進んでいく。
拾われたい落穂「ほわぁ!? 覚醒ハイル!」
撒かれたい種「えっ!うっまっ!」
響き渡る鐘「ワイパーすご!!」
掲げられた三色旗「どゆこと?」
耳を塞ぎたくなる橋「初見じゃなかった」
希望の向日葵「いやまじかよ!!」
「気分が上がると身体の動きが良くなるね〜!」
今まで入ってた力が嘘のように、抜けるとこは抜いて必要なところだけ力を加えて、ずんずん上がっていっても腕が疲れない。鼻歌を歌う余裕さえある。
掲げられた三色旗「そういう問題じゃない」
耳を塞ぎたくなる橋「キャラコンエグいって」
拾われたい落穂「うみちゃんのデビュー曲」
撒かれたい種「鼻歌助かる」
響き渡る鐘「うみちゃん好きだよね」
あっという間に
「もう一回乗りたい気持ちはあるけど、クリア耐久だからこのまま頂上目指すね!」
バケツにハンマーを引っ掛けてひょいっと身体を飛ばして上に上がると、そのままハンマーをピッケルのように雪の斜面に引っ掛けて飛び上っていく。
なんかコツを掴んじゃったみたい。
ハンマーを伝って手に返ってくる感触で、滑るのか岩肌を掴めるかなんとなく分かるようになってる。そして、どこでどんな方向に力を入れればどの向きに跳べるかが分かってしまう。
だから、垂直に登るのも難しくなくなった。
「ラスト一気に上がるね」
拾われたい落穂「仰せのままに」
撒かれたい種「行けー!!!!」
響き渡る鐘「空の彼方へ〜!」
電波塔を一気に登ると、突然自分の身体が軽くなる。
「ふわぁ〜! 浮いてる〜!!」
そう、このゲームはここから突然無重力空間に入る。まだ成層圏だと思うんだけどなー
空気が希薄になる訳でもなく、無重力を安心して楽しめるのはゲームの良さだよね。
重心を体の外側になるようにハンマーを振り回して、少しずつ加速すると、空のその先の宇宙空間に向かって勝手に進んでいく。
そしてあっさりとエンディングを迎えた。
拾われたい落穂「クリアおめでとう!!」
撒かれたい種「怒涛の山登りだったね」
響き渡る鐘「感動した!」
掲げられた三色旗「いや、困惑したわ!」
耳を塞ぎたくなる橋「最後の数分だけでいいんじゃね?」
希望の向日葵「語彙力無いなった」
「みんな応援ありがとね! 困惑してる人もいるみたいだけど、今日は楽しかったよ!」
そしてわたしは、配信終了の挨拶をしてエンディングを流してから、少しアフタートークをして配信を終わらせた。
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