第3話 配信の世界2
家の中は設定通り、配信部屋の他にはトイレやお風呂、キッチンやダイニングがある2LDKのマンションみたいな作りだった。
そしてマンションの玄関扉を開けると――また廊下だった。マンションの廊下と言うよりは、もっと大きな建物の多くの人が通るための通路。
人影のない大きな通路って不気味だよね……
ホラゲの世界なら良くありそうな状況を感じながら通路を進んでみると、通路の先は光り輝く壁でどこに繋がっているのか分からなくなっていた。
ホラゲというより、探索型パズルゲーだったかな? 光の壁の先は全然違う場所に繋がってたり……
意を決して恐る恐る光の壁の向こう側を覗くように顔を近付けると、光の向こう側は広大な空間に繋がっているのが見えた。空間に視線をさ迷わせると、視線の先に見える建物だったり星だったりが目の前に寄ってくる感じで、選べばその見ているものに通路が繋がるみたい。フォーカス選択式ってVRらしいね。
さて、わたしが今行きたいのは、わたしの配信を見るところだから……そう思ったら、目の前に劇場の入口が繋がった。どつやらここがわたしの配信サイトらしい。古めかしい雰囲気の入口なんだけど……?
ヨーロッパの古い劇場っぽい雰囲気のデザインを詳しく見てみたいけど、それは後で確認するとして、とりあえず入ってみる。だってエンディングムービーが流れている間に入りたいからね……って、わたしが配信切らないとループしたままだね。
劇場に入るとすぐ歩ける程度に照明が落とされた客席があって、その先に緞帳の降りた舞台が見えた。入口でも感じた雰囲気が保たれている。これはヨーロッパの絵画を中心に世界観作ってたからその影響が出てるのかな?
降りた緞帳にはプロジェクターで映し出されるように、わたしのエンディングムービーが流れていた。
「わーお」
オペラ劇場で見る映画みたいで、現代と中世の融合って感じがして、こんな題材も良いなとか思って思わず声を上げてしまった。
すると客席にいた人達が一斉にこっちを向いた。
「ハイルちゃん!?」
「今日はエンディング長いと思ったけど」
「エンディング後にコメント入れるとか珍しい」
「コメント内容意味不明」
「ひゃっ!」
一斉に喋り出すからビックリしちゃった。
そしたら更に幾つか言葉が帰ってきた。
「配信切り忘れた上に謎コメント草」
「天然ちゃんか?」
「いや不思議ちゃんだろ」
「元々そうだった」
この反応からするに、みんなはコメント欄でやり取りしてる感じなんだね。わたしはここにいると、喋ったらそのままコメントに出てしまうみたいだけど。魔法みたいで楽しい。
謎コメントで終わったら流石に悪いよね。挨拶しとこ。
「驚かせてごめんね。いつも最後まで見てくれてありがとう。今度こそ本当に終わるね」
「こちらこそいつも配信ありがとう」
「切り忘れは焦ったけど仕込みだったんだね」
「自室まで再現しちゃうとは」
「ホントに配信の世界に入ったみたいで面白かったよ」
「ハイルちゃんって感じ」
みんなは
本当に入り込んだって言っても誰も信じないだろうし、このまま勘違いしておいてもらおう……
さてと、エンディングムービーも客席も確認できたし、じゃあホントに配信を切りに戻ろう。
って思ったら、客席が明るくなった。どうやら思っただけで配信が切れたらしい。遠隔操作も出来るみたい。便利な世界だね〜
客席が明るくなると、起きていた人達は光に包まれるように消えていき、寝ている人は何も変化することなくそのまま寝続けている。残ってる人達は昨日わたしが配信切り忘れたからそのままチャンネル開いたままにしてくれてる人かな? なんか申し訳ないね。なら追い出すのも違う気がするからそのままにしておこう。
そう思って、わたしは一旦配信部屋に戻ることにした。
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