チャラ系クズ公爵子息の年貢の納め時

草田蜜柑

第1話 クーゼリオンの婚約

俺の名前はクーゼリオン・ブルーセオット。


公爵家ブルーセオット家の一人息子だ。


これは自慢となるが、俺はイケメンである。


サラサラの茶髪は伸ばす事でより俺の魅力を際立てるし、ロマンス小説から飛び出たような王子顔にアイスブルーの瞳、長身、長い足も俺というイケメンを作る一助となっている。


さらに頭も良い、剣術も得意な方だし、話術もある。


マジ、俺に不可能とかないんじゃね?


なんて思っていると



パンッ!



頬に熱い衝撃が走った。


「最低!死ね!」


ついでにもう片方からも



パンッ!



「信じてたのに!裏切り者!」


仮にも公爵子息への対応とは思えない仕打ちと暴言を吐き、女の子達は立ち去って行く。


「おー、見事に振られたな、クーズ」


「可愛い女の子ならまだしもなんで男にクズなんて言われなきゃなんないんだよ、エル」


一体どこからどこまで見ていたのか。


草むらに隠れていた俺の友人、エルフォール・ロックエイドは頭に葉をくっつけながら出てくる。


銀髪碧眼の顔立ちは俺とは違った意味で端正だった。


垂れ目の涼しげな瞳に、背はそこそこ高いものの線は細め。


クールで神経質、という印象の強いこいつが、実際はただの人見知りが激しい内弁慶だと知るのは身内と幼馴染である俺だけだろう。


「クズはクズだろ、女の敵。

これで何回女泣かせた?」


呆れたように言ってくる。


「さぁな、でも、女を泣かせるのはイケメンの宿命だし仕方ないだろ」


「刺されて死ねや」


流れるように暴言を吐いてきた。


「ってか、せめて別れてから他の女と付き合えば良いだろ。

毎度毎度、二股三股、そりゃ女だって怒るだろ」


「仕方ないだろ、俺というイケメンは一人の女には収まらないんだよ」


「はぁ、女はこんなナルシスト馬鹿のどこに惚れるんだろうな」 


「顔」


そして性格。


俺はフェミニストだから、女の子には優しく紳士的に接すると決めているのだ。


それで勘違いして寄って来て恋人らしい振る舞いを期待するのは女の方である。


それを俺は叶えているだけだ。


「とにかく、もう会場に戻るぞ。

そろそろ第3王女の婚約者が発表されるだろ」


「ん、そういえばそうだな」


そもそも、今俺達がいるのは城の中庭だ。


今夜は第3王女ルーネリア姫の婚約者が発表される。


有力貴族はその発表パーティに呼ばれているのだ。


当然、公爵家である俺の家からも一族全員参加である。




パーティ会場へ戻るとちょうど、壇上に王族達が上がった。


国王陛下の側には第3王女、ルーネリア姫が控えている。


漆黒の髪を伸ばし、紫色の瞳は若干吊り上がっている。


顔立ちはそこそこ可愛いが目を張るレベルではなく、公式の場だというのに愛想笑いすら浮かべずムスッと不機嫌そうな表情を浮かべている。


「これより、我が娘ルーネリアの婚約者を発表する!

この婚約は、ルーネリア自らが見定め、決めたものである!」


俺は欠伸を噛み殺しながら壇上を見つめる。


たとえ王族といえど、人様の結婚事情などどうでも良い。


俺が選ばれるわけでもあるまいし。


手に取ったシャンパングラスをゆらゆら揺らしながら、他人事で国王の言葉を待っていると……



「我が娘ルーネリアの婚約者は……クーゼリオン・ブルーセオットである!



「……は?」


前触れもなく、当事者となった俺は、多くの貴族が視線を向けてくる中でしばらくの間、何を言われているのか分からなかった。

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