30. 敵襲
軽井沢ダンジョンの攻略を始めてから3日目の夜。野営地の広場でご飯を食べていたら、初瀬さんが険しい顔で「あれを見ろ」と言った。
杭打だった。杭打たちがこのダンジョンにやってきた。あの男の自信に満ちた顔を見て、飯が不味くなる。
「あの男もこの場所ではでかい顔できないだろうから、その点では安心だな」
「そう、ですね」
初瀬さんは楽観的だったが、俺は安心できなかった。奴が同じダンジョンにいると思うだけで気が重くなる。
「明日は早めにダンジョンへ出かけよう」
「わかりました」
そして翌朝。周りが薄闇に包まれる中、俺たちはダンジョンに入った。ダンジョンのひんやりと土臭い空気を肺に入れ、落ち着く。あの男のせいで、朝から憂鬱な気分になっていたが、幾分かマシになった。
胸を撫でおろす俺の隣で、初瀬さんは言った。
「なぁ、一つ提案があるんだが」
「何ですか?」
「アイテム探しをしないか? 地下10階を突破するために、今までいろんな冒険者が武器を含む様々なアイテムを試してきたが、どれもうまくいかなかったらしい。だから、あそこを突破するために、新しいアイテムが必要になるわけだが、今は他にダンジョンがないから、ここで見つけるしかない」
「でも、地下10階までなら、結構、探索されているような気がするのですが」
「報告上はな。ただ、ダンジョンには隠し部屋とかがあるとも聞くし、それを探そう」
「隠し部屋。確かに、そんなものがあると聞いた覚えがあります」
「だろ?」
「ただ、まだ使用されていないアイテムで言えば、『幸運の跳竜』を倒した時に手に入るであろう、アイテムも候補になるんじゃないですか?」
「確かに。なら、地下7階で、隠し部屋を探しつつ、幸運の跳竜を倒そう!」
「はい」
俺たちは地下7階に移動し、隠し部屋を探しながら、幸運の跳竜も探した。地下7階には、同じように幸運の跳竜を探している冒険者がいて、彼らと情報交換を行う。彼らの話によれば、1日に1回は、遭遇はするらしい。しかし、幸運の跳竜は警戒心が非常に強く、また、動きも速いため、攻撃を当てることが困難だという。
「あいつはゴキブリよりも速いぞ」
と、ある冒険者は言った。
1日に1回は遭遇するという言葉を信じ、俺たちは地下7階を探索した。しかし、中々、遭遇しない。当然、地下7階には、幸運の跳竜以外のモンスターもいるので、そいつらの相手もしなければならない。個人的には、戦闘回数が増加して喜ばしく思ったが、さすがの初瀬さんもしんどそうにしていた。
今日の探索を打ち切って、帰ろうとしたとき、俺たちの前に金色に輝く『幸運の跳竜』が現れた。
見つけた瞬間、俺は氷の塊を放った。が、幸運の跳竜は容易く俺の攻撃を避けて、逃げ出した。初瀬さんと一緒になって追いかけるも、すぐに見失った。
「……やり方を考える必要があるな」
「ですね」
その日は諦めて野営地に戻った。
夜に『幸運の跳竜』を倒す作戦を練ってから、眠りにつく。
そして翌日。意気揚々と地下7階に向かい、テンションがガタ落ちする。杭打たちが、冒険者を集めて、何やら話し合いを行っていたからだ。
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