13. 初めての報酬
報酬を受け取りに行く道中で、金髪たちのことを知ることができた。
まず彼らは19歳で、高校時代は有名な暴走族だったらしい。何か大きなことがしたいと考え、卒業と同時に暴走族を解散し、冒険者になったとか。年下であることにも驚いたが、彼らの生い立ちにも驚いた。褒められた経歴ではないかもしれないが、俺の人生がクソみたいに見える。
彼らは元暴走族だから、怖いかと言えば、そんなことはなく、フレンドリーだった。
「俺たちは一緒にダンジョンを攻略した仲だから、そんな堅苦しい喋り難しなくていいよ」
と金髪の日暮涼真に言われた。どちらが年上なのかと思ってしまうが、彼らにそんなことを言うのは無粋な気がしたので、俺は素直にその言葉を受け取った。
最初に受付を行った場所に行くと、冒険者たちの列ができていた。受付で書類にサインすれば、報酬が貰えるらしい。
「今回はどれくらいの金がもらえるのかな」と日暮。
「ダンジョンの難易度が低かったから、期待できないだろうね」とソフトモヒカンの綾瀬が答える。
聞いてみると、報酬は①ダンジョン報酬、②成功報酬、➂ランク報酬、④免許報酬、⑤その他報酬の5つの項目によって構成され、各項目の合計金額がもらえらしい。今回は『ゴブリンの巣窟』と呼ばれる難易度が最も低いダンジョンに認定される可能性が高いため、ダンジョン報酬は低い。ただ、1日で攻略できたので成功報酬が高めに出る可能性はある。ランク報酬に関しては、100以内に入らないと雀の涙ほどしかもらえず、1類の免許報酬は2類のそれに比べ、3割ほど安くなっていて、ダンジョン内で見つけたアイテムを渡せば、その他報酬が上がるとのことだった。
(アイテムを渡せば、その分金になるのか)
ポケットを漁ると、空になった小瓶が一つだけ残っていた。
「もしも次の攻略を考えているなら、それは自分で持っといた方がいい」と綾瀬は言う。「まぁ、武器や防具は、銃刀法違反とかで預けることになるんだけど」
「なるほど。あれ? 火薬はいいの?」
綾瀬が鞄を開けて、火薬を取り出した。ダンジョン内では黒い粒が入っていたが、外で見ると空になっていた。
「瓶に入っている系のアイテムは、外に出ると空になるんだ」
「……なるほど」
俺は小瓶をポケットにしまった。と同時に、今度ダンジョンに来るときは、綾瀬のような鞄を持ってこようと思った。
「そういえば、俺たちがヌシを倒したのに、その分は出ないの?」
「倒した証拠がないからね。証拠があると、くれるんだけど」
「スキルカードならあるけど」
「ここでだせる?」
「……だせない」
「な。でも、次のダンジョンに入ったときに、ギルドの職員に見せれば、そのときに貰えるよ」
「なるほど」
というか、スキルカードってダンジョン内なら出せることを初めて知った。
俺たちの番になり、書類にサインして、報酬を受け取る。
今回の報酬は――3万円だった。
「しょっぺぇな」と日暮は不満げだった。
「まぁ、仕方ないよ」と綾瀬。「レポートとかしっかり書いて、ランクを上げていけば、報酬も増えていくさ」
レポートを書くことでランクが上がることも初めて知った。
(いろいろと勉強不足だな)
講習のときに話をちゃんと聞けばよかったと思う。死ぬことばかり考えていたから、内容が頭に残っていない。
(ま、あとで資料を見返すか)
受付に預けていた荷物を受け取り、日暮たちを見送るため、近くの駐車場に移動した。
「本当に乗っていかなくていいのか?」
日暮が厳ついバイクのエンジンをふかしながら言った。
「ありがとう。でも、電車で帰りたい気分」
「そうか。んじゃ、またどこかのダンジョンで会った時はよろしくな」
「ああ。こちらこそ」
日暮たちは、ひときわ大きなエンジン音を鳴らすと、風のように去っていた。遠くなる背中を眺めながら、今度はどこのダンジョンに参加する予定なの? くらいは聞けばよかったかなと思う。
(まぁ、いいか)
俺はそういうタイプの人間じゃない。
寒い静かな駐車場で報酬が入った封筒を取り出し、中を確認した。
諭吉が3枚。日暮の言う通り、仕事内容の割には、しょっぱい金額かもしれない。それでも、今まで稼いできたどのお金よりも、輝いて見えた。
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