11. 完走した感想
俺はダンジョンで死ぬつもりだった。
だから今回の結果は、自分でも意外だった。
「すげぇじゃん、あんた!」
ソフトモヒカンが俺の肩を軽く叩き、気さくに笑った。
褒められるなんてことはあまりないから、俺は「はぁ、どうも」と戸惑ってしまう。
「いやぁ、まさかあいつにあんな一撃を与えるとはねぇ。俺は同じオスとして、ゾッとしたけど」
「なるほど」
俺はとくに何も思わなかった。ただ、やつを倒すために最善の手を尽くしただけだ。
「ナイスだったな」と金髪にも言われる。「あんたがいなきゃ、やばかったかもしれん」
「どうも。まぁ、でも、俺も『火薬』が無かったら、あいつを倒せなかったと思うし、皆さんのおかげです」
「まぁ、確かに。俺らがいたからこそ、倒せたのかもな」
「今回に関しては、お前はあんまり仕事をしていないけどな」と剃り込みに言われ、金髪は「そんなことないわ!」と反論する。
いつの間にか、リーゼントと小太りの男もいて、彼らは笑っていた。そんな彼らを見て、俺も自然と笑みがこぼれる。
不思議な気分だった。自分みたいな人間が、彼らのようなヤンチャな集団の輪にいることが。今までなら、ありえない出来事だ。
「あ、そういえば」と俺はリーゼントのことが気になった。「右肩は大丈夫なんですか?」
「ん? あぁ」とリーゼントは右肩を抑える。「ポーションのおかげで、ある程度傷をふさぐことはできた。が、完治はしてないから、しばらく安静にする必要がありそうだ」
「そうですか。なら、良かった」
「心配してくれて、ありがとな」
「あ、いえ」
リーゼントに感謝され、こそばゆく思う。
俺は岩壁を眺めながら改めて考える。俺は死ぬつもりでダンジョンに入った。しかし、俺が死ぬことはなく、新たな一面を見つけることができたし、人に感謝され、褒められた。ダンジョンには今までにない経験があった。
そのとき、「おい、お前ら」と声がした。目を向けると、グレーの髪を撫でつけ、顎髭を生やした凛々しい顔つきの男が立っていた。ダンディなおじさまといった感じ。一瞬、誰かわからなかったが、着ている鎧から何者かわかった。杭打である。後ろには、高橋などの仲間の姿があった。
「お前らが、今回のヌシを倒したのか?」
「そうだけど」と金髪が答える。
「そうか……だが、これだけは言っておく必要がある」
杭打は、くわっと目を見開いて、言った。
「勝手なことをするんじゃない!」
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