腐ったミカンの下剋上

三口三大

腐ったミカンの下剋上

第1話 初めてのダンジョン攻略

1. 裏切りの連続

 最初に俺を裏切ったのは両親だ。親はいわゆるカルトにはまっていたのだが、幼かった俺は、それの意味することを理解できず、自分たちと違う考えを持つ同級生たちを『悪魔の子』だと本気で思っていた。それが原因で、同級生にいじめられるも、『彼らに屈することは悪魔に屈すること』と教えられ、我慢することを強いられた。


 次に俺を裏切ったのは、小学校の担任だった。あの人は、『皆仲良く』と言いながら、いじめられている俺を助けなかった。多分、俺が何も言わなかったから、見て見ぬふりをしていたんだと思う。


 中学の担任も俺を裏切った。さすがの俺も、中学生になり始める頃から、自分の両親と共存していくことは難しいことに気づく。だから担任に、親がカルトにはまっていることや、それが原因で人間関係に苦労したことを相談した。そしたら担任は、『ありのままの宿須君を、皆、受け入れてくれるよ』と言った。その言葉を信じていたが、誰も俺を受け入れることは無かった。いじめはなかったものの、気味悪がって誰も近づかなかった。そのときから、誰かと生きることを諦め始めた。


 高校の担任も同じ。親との絶縁を考え始めていた俺が、その方法について相談すると、担任は『勉強を頑張って、良い大学に入れば、良い会社に入れるし、一人でも生きていける』と言った。だから俺は、勉強を頑張って、良い大学に入った。親とも絶縁し、一人で生きることにした。しかし、一人の生活は大変苦しく、生活費や学費を稼ぐために毎日バイトをしていた。そして、就活も思うようにいかず、結局ブラック企業にしか就職できなかった。


 会社の人たちのことは未だに恨んでいる。上司がパワハラ気質で、学歴コンプレックスをもつ人だったから、毎日、いたずらに怒鳴られた。先輩もフォローしてくれない。人事部の人に相談したが、『人は怒られて成長する』、『今は辛くとも、そのうち慣れる』、『とりあえず、3年は頑張ってみよう』と言われ、耐えることを強いられた。そして結局、メンタル的に仕事が続けられなくなって、俺は会社を辞めることになった。


 会社を辞めた後、俺の手元に残ったのは、『うつ病』と書かれた診断書だけだった。俺のそばに、期待を抱かせた人々の姿は無い。一人きりのワンルームで、俺は俺が関わってきた全ての人を、そんな人々を生み出したこの社会を恨んだ。皆、俺を期待させるだけ期待させて、結局最後に裏切った。この社会に俺の味方はいない。全員が敵だ。しかし、そんな社会に復讐することもできず、涙を飲むしかなかった。


 それから死ぬことを考え始めた。さっさと死んで、この苦しみから解放されたかった。上司は俺のことを『腐ったミカン』とか、『社会のお荷物』と言っていた。その通りだと思う。俺が生きていたところで、この世界にプラスになることはない。でも、自殺する勇気が無いから、毎日、死ぬ理由を探して、街を徘徊した。


 そして、俺は見つける。


 俺の死に場所を。


 それが、『ダンジョン』との出会いだった――。

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