推しを全力で幸せにしたいだけの転生悪役令嬢、何故かヒロインに付け狙われています。
蓮上
第1話 誰かのプロローグ
「あら? おかしいわね……イベントが起こらないじゃない」
少女は首をかしげる。おかしな話だ、何せ物語はここから始まるっていうのに。可憐なヒロインと美しい青年たちの、目くるめく愛の物語の幕開け。
麗しく清廉な乙女は世界を見守る女神の声に呼ばれ、運命の出会いを果たす……。そういうシナリオだったはずだ。それなのに。
その舞台となるはずだった中庭には、彼女以外人っ子一人見当たらない。時間を間違えただろうか? いいや、入学式のすぐ後のことだったはず。
しかし、しばらく待ってみたものの誰もやってきそうにない。遠く聞こえていたざわめきも去り、辺りは静寂に包まれている。
「うーん……。まあ、いっか」
物語と違う動きをするだろう駒のことはわかっている。きっと彼女が、シナリオ通り進ませまいと小細工をしているのだろう。
彼女がどんな動きをしようと、結末は決まっている。イベントが一つ起こらなかったことくらい、些細なことだ。
「最後に勝つのは、私だもの」
少女はクスリと勝ち誇った笑みを浮かべ、踵を返した。この後、物語が大きく変わっていくとも知らずに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます