怪物農家〜農業してたら勝手に強くなるなぜ?〜

@kakukaki

第1話 人生の変換点

「くらえ!スーパーウルトラーギガントパーンチ」

「うわっ!」

「45センチやるなーこれは負けたかもしれないな」

「おう今日こそは勝たせてもらうぞ」

「ふんまだまだね」

「なにをーお前だって30センチくらいしか飛ばせてねーじゃねかよ」

「それはこのゴミが吹っ飛ばないのがいけないのよ」


5〜6人少年少女が一人の少年の顔面を殴ってどこまで飛ぶのかというゲームをしながら遊んでいた。


「………あーあ結局直人なおとの優勝かよ」

「ふふふみんなまだまだだね。もっと体重を乗せて殴らないと、こんなふうにね」

「うわっ!?」

「おお飛んだなーこれ55か56くらいいったんじゃない?」

「新記録じゃん。すげー」

「くっ次こそは絶対勝ってやる」

「ぐ…………へっ!」

「僕はいつでも挑戦を受け付けるよ」

「直人くんカッコいいー」

「………がっは!」

「それにしてもこのゴミはいったいなんなんだろうね。こんなのが直人の兄なんて完璧な直人の唯一完璧じゃないところだな」

「直人くんにそんなこと言わないで!直人くん自身が一番辛いのよ」


少年を殴ったり蹴ったりしながら進む会話それははたからみたら狂気に満ちた会話だがこの中で一番狂気を持っているのは……。

(なんでだよおかしいだろ。一番辛いのは俺だよ才能のある弟と常に比べられなにがあっても弟優先、家ではもはや俺はいない存在、元々あった俺の部屋も弟が「こんな無能がいた部屋にいると有能な僕が無能になっちゃう」というから物置部屋になり俺は屋根裏に追いやられるなにが「直人くんが一番辛いのよだ」ふざけるな。

今日こそはやり返してやる)

少年だった。


そうして今日も自分自身を奮い立たせて少年は立ち上がり殴りかかる。

少年の渾身の隙を着いた攻撃———だが——それでも世界は残酷であった。

簡単にかわされ腕をつかまれさらには周りから殴られ蹴られる。


「おいゴミなにしようとしたのかわかってんのか?」

「お前直人になにして……」

「おいゴミ直人くんになにしてんだよあぁ!」

「ゆなちゃんこわ」

「ゴミがなにしてんの?」


弟に問われる。


「別……に俺からの最後の抵抗だが?」

「ふうん最後にしては随分と無様だね」


だが、だがである。少年は決して諦めていなかった。

(弟には何をやってもうまくいかないそんなこと何度も試したからとっくのとうにわかっている。それでも一度でいいたった一度でもいいから復讐したいだから)

少年は弟を殺せなくても一矢報いると家の台所から拝借した包丁と自分にあるいじめられ差別されてきた自分の腹、胸、背中などの傷に誓った。


「直人お前のことが今まですっげー羨ましかったぜ」

「はぁ、ゴミがなに言って、ごふぁ!?」


(刺さった)

少年は懐から取り出した包丁を持ち一気に弟めがけて突き刺す。

見事少年は弟の腹に包丁を突き刺すのに成功し弟は自分の腹からくる猛烈な熱さそして痛みを受け悶える。


「……うわああああぁぁぁぁああああぁぁ」

「これが俺の受けてきた痛みだ!」


(やったぞついに直人に復讐できた)

予想外のことに驚き少年少女はなにも言えず固まっているが一人の少女がすぐに動き少年を殴り吹っ飛ばし直人を助けようと包丁を抜こうとする。


「ぐうっ」

「直人くん!」

「てめぇ直人になにしてんだ!」

「なにって復讐だけど?」

「「「「え」」」」

「いやいやなに驚いてるんだい?」

「ゴミが復讐っていったいなにを言ってるんだ?」

「そ、そうだぞ」

「もう包丁も無いくせにどうやってやるんだよ?笑わせんな」

「逆にお前を殺してやるよ俺がいたぶってな」


確かに少年の手にはなにも無いだが。


「いったいいつ俺が包丁を一本しか用意していないっていったんだ?復讐はこれからだ!」


少年にはこんな状況になると簡単に想像できていたので背中の服に隠していたカッターを左手にズボンのポケットの中に隠していた包丁を右手に持ち大柄の少年に突っ込んでいく。


「うをおおおおぉぉぉぉ」


お腹目掛けてカッターを縦に振り包丁を突き刺す。

やはりいじめっ子といえど人間本能的恐怖には勝てずもろに攻撃を受けてしまう。


「ああああぁぁぁあああいでえぇぇいでぇぇぇえええええぇぇぇええ」

「よくもやっ君を、くらえ」

「ぐっは」


少年の予想外の行動に困惑していた少年少女はなんとか状況が飲み込み少年に反撃を始める。

だが少年は止まらないいや止まっている暇などない

(ボロボロな俺の体持ってくれよ)

そう少年は今まさに魂を燃やしている。

いじめとは言えない程のもはや死の淵まで来ることが何度もあった少年の体は今や限界に達していた。


「あああぁぁぁぁぁああああああぁ!」


だが、いやだからこそ少年は止まるわけにはいかない。

囲まれても顔を殴られても足を折られても止まらない少年の風前の灯だった魂は今まさに豪火となって燃えている。

そして………一人は両手の腱を切り首を貫く、一人は目と足を切る、一人は両足の腱を切り心臓を刺す、一人は弟のことをずっと呼びかけていてこっちに気づいていなかったので後ろから首を貫く。


「終わった」


(凄く晴れやかな気分だ)

少年の復讐は人生はこれで終わる、休むことなく幾度となく傷ついてきた魂と体今ようやく休むことができる。

(最後に目的を達成できてよかった)

少年は最後の力を振り絞り自分の首に包丁を向ける。


………………だがその刹那背後から刺されるような感覚がした。

(な、なんだ?)

後ろを向こうとしたが首に包丁が刺さっているので振り向けずそのまま視界が真っ暗になっていく。

(まあ、終わったからいいか)

そうして少年は息を引き取った。


「あははははははははははははははははははあああああははははははははははははははは」


誰もいなくなった公園で笑い声がする。


「あーあ、ありがとうゴミ兄さん


立ち上がった男それはさっきまで腹に包丁を刺され悶えていたはずの直人が血まみれではあるが傷一つ無く佇んでいた。


「一度死んで全て知ったよ僕が何者でなぜ生き返ったのかああ本当にありがとう今日この日この時間この場所が僕の人生の変換点だ!」


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