説教
あまりに余りあるあなたに向かう望遠
夢の中の夢
香りの無い桜
味のしない料理
涙のない別れ
あれ?
わたし、どこにいるんだっけ
ざぶん
過去に生きた人間は今を生きる人間に生かされる
ブラウン管の中
ぼんやりと輝く光が教えてくれる
私はあの日私の毛皮を剥いだ人間を覚えている
ピクセルの向こう側から
目を見開いてぼくを見ている
それで威嚇しているつもり?
三角座りで画面に食い入る
泥に塗れた両手で AKを抱いているぼく
おざなりの 口先だけの救命信号
ああ この子は必死になって不幸を飾り立てて 自分で自分にしたことなのに それで滅入っちゃって
お城なんて砂で作っとけば良かったのに 頑丈な鉄骨なんかで作るから
嘲笑
頬には数本の涙の跡
縦横斜め 助けてくださいが沢山体に書かれてる 自分で付けた傷(笑)
傷(笑)だらけの 心(笑) 脳髄(笑) 私(爆笑)
対して
剥がれた爪と指の皮 地べたの花火にもがれた脚 私に取られたようなもの
傷だらけの身体 体 心 カラダ
頬には幾本の涙の跡 があったけれど 最近枯れて流れなくなった
ミサイルの雨 飴色の煙
お母さんが お父さんが 妹が 焼ける匂い
アメリアの言葉 爆弾と花びら
右の駒 左の駒 戦争屋さん
あらゆる誤解の歎異抄
あまりに余りある"ぼく"に向かう望遠
羨望 願望 欲望 誹謗
黒と黒 白と白 混ざり合ってもわからない
もとは一つだったなんて笑わせないでよ
ぼくと私が一つだったなんて思わせないでよ
気持ち悪い
今に生きる人間は未来を生きる人間に殺される
ブラウン管の中
小さな男の子がこちらを見ている
見ている
ぼくはあの日ぼくの頭蓋を撃ち抜いた人間を忘れないよ
ぼくを ぼくの家族を滅茶苦茶に壊した人間を忘れないよ
ピクセルの向こう側から
目を見開いて私を見ている
私は見られている
こんなことになると思わなかったって言っても それ
言い訳だから
ぼくの声
ぎらつく山刀
冷や汗
私がぼくを謂うときに使う架空の世界のフィルター
空想の中でしかぼくを語れない私
こっちを見てよ
なんで見ないの
なんでぼくのこの千切れた脚を見ない
裸に剥かれたぼくの妹をなんで見ない
アマゾンのほしい物リストは見るくせに
スタバの新作メニューは見るくせに
見たいものだけを見る
見たくもないからチャンネル変える
プツン
次のニュースです
地獄から逃れようとするな
死の先に地獄はない 地獄は私が生きる世界の延長にある
私が見ているのは地獄じゃない
これは張りぼてのおままごと 苦し紛れの安っぽい墓標
それは数十数百の錠剤でやってくる
剃刀を握ればやってくる
一言つぶやけばやってくる
ただそれだけ ほんとうにそれだけ
ベルフェゴールが用意した 滓が喜ぶ滓のための滓による怠惰の装置
私がそれをし続ける限りぼくたちは私を許さない
ぼくたちの死体の上に私が立ってることを思い知らせてあげる
思い知らせてやるんだ
気づいてくれる誰かのためにぼくは私たちを踏みつけながら行進を続ける
バラバラのぼくたち でも考えていることは同じ
みんな思ってる のうのうと生きてる私たちを壊したいって
■散った花びらをわたしだけは覚えている
足元にカメラの視線を合わせる
そこには ぼくたちの身体が埋まっている
解けるリボンとブラックシープ 六塚 @murasaki_umagoyashi
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