殺戮少女とラグナロク - 壊れ果てる世界の先で -

黒砂糖。

0:ALICE is ***

ALICE is ***


 曰く。

 彼女は「気が触れている」という表現が適切なのだろう。

 人を殺して回っている。

 それだけでも、十二分に、気が狂っている。

 ただ――。

 彼女には彼女なりの、理由、大義名分がある。

 曰く。


「神様が殺しなさいって。そう。仰ったから」


 にこり、と、笑いながら、嬉しそうに、銃剣の付いた突撃銃を華麗に振り回し、小躍りを交えつつ、彼女は自慢げに胸を張る。


『〝……――自らの行為に、意味は、あるのか?〟』


 恐らくは、そんなことを、一度でさえ考えたことはないのだろう。

 彼女の信仰は、つまり、〝狂気的〟なのだ。

 語る。

 〝神様〟とやらは、日常的に、彼女の意識に語りかけるそうだ。

 処分するべき存在の名を。

 処分するべき理由を。


「……――キミは。その神託に。異を唱えたことはないの?」


 黒い服の青年、彼が彼女アリスに問いかけると、首を傾げながら答える。


「神様が言うことなのだから。間違いはないわ。絶対に」


 盲信ではないのか。

 青年の頭によぎる、疑念、口を挟みたくもなる。

 だが。


「きっと――。うん。そうなんだろうね」


 青年は、疑念を抱きつつも、彼女の言葉に異を唱えない。

 首肯。

 彼女の言葉に相づちを打った。


『〝ボクは、ただ、キミの側にいたかった――〟』


 青年の心は、それだけで、満たされている。

 故に。

 他の物事は些細なコトだった。


 アリスを支える。


 それだけが、青年ユキトの生きる理由であり、青年ユキトが生きるすべてであった。

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