【1万】夜の国と昼の国のオリオン

平蕾知初雪

プロローグ 赤と白のパスポート


 僕が十三歳になったら、二つ年上のミッカとバンドを組む約束をした。それが僕の夢。


 ミッカは十三歳の誕生日、昼の国の住人に選ばれた証に赤いパスポートを受け取った。

 それから二年が経ち、今日は僕の十三歳の誕生日。だけど僕の元に届いたのはミッカと同じレッドパスじゃない。夜の国専用の白いパスポートだった!

 両親もおばあちゃんも、リー叔父さんやいとこのロズも昼の国の住人なのに、まさか僕だけ夜の国に選ばれるなんて!


 昼の国と夜の国は一度も交わったことがない。

 八時と二十時を境に、二つの国はくるりと反転するように入れ替わってしまうからだ。だからそれぞれ法律も違うし交通ルールもゴミ捨ての場所も違う。

 なにより問題なのは、昼の国と夜の国の住人は絶対に会えないということだ。

 十二歳までの子どもと幽霊ゴーストは別だけど。


 世の中はそういうもので、昔からそういう決まり。

 でも僕はミッカとお別れなんて絶対に嫌だ!


 僕が夜の国の住人になるのは今夜の午後八時以降。ミッカと同じ昼の国にいられる時間は限られている。

 僕が自由に使える時間は誕生日パーティーが終わる午後三時から。つまりたったの五時間だ!


 それでも僕は僕の夢を絶対に諦めたくない!

 僕はミッカと同じバンドで、ミッカの一番近くで歌うんだ。きみがまだアルトで、聖歌隊の練習のあと二人で替え歌を作って遊んでいた頃みたいに。

 ミッカがいない世界なんて、僕にはとても耐えられない! だから僕は必ず、明日も明後日もきみと会うための方法を探すよ。


 ああ、でも時間がないんだ。僕はどうしたらいい? わからないけど、僕が確実に言えることは、どんな手段を使っても夢を諦めたくないってこと!!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る