第3話
海翔と別れて家に帰る。ダンジョン攻略は俺が錬金術の使い方を理解するまではできないから、当面は属性について理解することに努めたいと思う。
とはいってもなぁ...前例がないんじゃ何も参考にするものがないし、そもそもこれがどういう属性なのかもわからない。
魔法を使いたい時はとりあえずその魔法の名前を使おうと意識しながら口に出してみると良い、と海翔に言われたのを思い出して、「錬金使う錬金使う」と意識しながら口に出してみる。
「れ、錬金」
何も起こらない。間違っているのだろうか。
いや、まて。
家に帰ってから調べたが、やはり錬金術は卑金属(鉄、アルミなど)を貴金属(金など)に変換する魔法だったはずだ。うーん、鉄なんて持ってないしなぁ...アルミなら...あ、1円玉って確かアルミだったような...いやいや、お金に手を加えるのは確か法律的にダメだったはず。あ、そういえばキッチンにアルミホイルがあるはずだしそれで試してみるか。
「錬金」
キッチンからアルミホイルを持ってくると500円玉サイズにちぎり、手のひらの上にのせてそう呟く。
すると今度は何かメニューのようなものが浮かび上がってきた。
【変形】【変質】
「変形...変質...?」
変形は要するに形を変えるという事だろうが、変質は...?まずは変形からやってみようと思いメニューの変形をタップする。するとまたもや何も起こらない。これも魔法の発動と同じように変形させようと思わないと効果が無かったりするのか?
うーん...球体にでも変えてみるか。
「おわっ」
球になれ球になれと思って変形の部分を押すと今度は手のひらの上のアルミホイルが一瞬光ると球体になっていた。もともとちぎったアルミホイルが小さかったからか、豆粒くらいの大きさの球体にしかならなかった。
「なるほど」
変形は文字通り形を変える、って感じらしいな。
ん-...少しもったいない気がするが、アルミホイル全部使ってやってみるか。
アルミホイルのロールを全部出して芯を捨てる。流石に手のひらの上には全部載せられないので床に置いたまま手をかざして
「錬金」
とつぶやくとまたもやメニューが出てくる。また球体になれと思いながら変形を押すと、今度はそこそこの大きさの球体になった。
球体以外も行けそうだな、剣でもやってみるか?
剣になれ剣になれと念じながらメニューの変形を再度押してみる。すると一瞬光ったアルミの球は剣へと変化を...していなかった。
いや、厳密には剣らしき何かにはなっていたのだが、想像してた剣とは少し違った。
これはもしかすると頭の中で明確なイメージを構築しないといけないのかもしれない。
スマホでファンタジー感たっぷりの剣の画像をじーーーっと眺めて想像しながら変形を押すと、今度はしっかりかっこいい剣の形になった。少しハイになって軽く振っていたらベッドの角をかすめてスパッと斬り飛ばしてしまい、途端に我に返る。
「あぶな...いや...銃刀法...」
一瞬で怖くなった俺は変形で球体に戻す。切り飛ばしてしまったベッドの角はばれないように木工用ボンドでくっつけておいた。まあこれで大丈夫だろう。
「さてと、気になるのは変質の方だけど...」
これも恐らく念じる系だろうなと思い、金になれ金になれと念じながら球体に向かって手をかざしもう片方の手で変質を押す。
すると一瞬光った後アルミの球は金色に変色していた。
「キンタマ...」
我ながらなんてことを言っているんだと思いつつも、変質は見立て通り別の物に変化させる効果があるとみて間違いないだろう。
お昼に家に帰ってから夕飯親に呼ばれるまで時間をかけて色々検証した結果分かったことをノートにまとめていく。
・変形は物の形を想像した形に変えることができる。
・大きさは変わらず小さい物を変形させても小さく変形する。大きいものを作りたいなら元となる物体もそれなりの大きさでないといけない。
・変形は金属に限った話ではなく木や布や土などにも使うことができた。とりあえず思いつく限り試してみたけど食べ物以外は好きに変形できた。多分食料って俺が認識している物には作用しない感じなんだと思う。幅広く運用できそうな感じ。あと当たり前だけど液体には使えなかった。まあ形ってものが存在しないからしょうがない。
・変質は物を別の物に変えることができる。アルミから鉄、金、金から鉄、アルミなど割と自由自在。
・プラチナとかダイアモンドとかには変質することができなかった、理由は分からない、分子構造とかも調べながらやってみたが無理だった、うんともすんとも言わなかった、これは後日要検証。
・あと驚いたことに、これも変形と同じで変質も食べ物や飲み物以外には使うことができた。木の枝から金を作ったりってのもできるみたい。
うん、錬金についてある程度は理解した。で、これをどうやって探索で使えばいいんだ?
夕飯を済ませ、シャワーを浴びた後俺はベッドの上で錬金術の使い方について考えていた、が、何も思いつかなかった。むしろ金とか鉄とかを大量に生産して売っぱらって金を稼いで装備を買ったりする方を思いついた。
でもそれは俺のやりたいことじゃないしなぁ...海翔に相談するか...
『おう、玲かどうした?何かわかったか?』
電話をかけるとすぐに海翔が出た。錬金術関連であることは明白だからかそう問いかけてくる。
「うん、全部じゃないけどある程度わかったよ。でも今の所とても戦闘に使えそうな感じはしないや」
『うーん、そうか。とりあえず明日学校終わったらまた探索者協会に行って探索者登録してそのままついでにパーティ登録もしようぜ。探索者登録したら自分のレベルとかステータスを見れるようになるカードと初心者用の装備一式もらえるからさ』
「わかった」
学校帰りにまた探索者協会に行く約束をして通話を切る。全て手探りでやって行かないといけない。暗闇の中を進んでいる気分になる。
でも基本5属性が一切使えず、得体のしれない希少属性1つしか使えない俺の事を海翔は見捨てなかった。俺に一緒にパーティを組もうって今でも言ってくれてる海翔のためにも頑張らなきゃな。
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