プロローグ

 とある大都市の冒険者ギルド。

 そこでは、一人のメイドが注目を集めていた。

「キリーちゃん、お手柄だったわね」

「すごいわ、キリー。あんな凶悪な魔物を一人で倒しちゃうなんて」

 キリーと呼ばれたメイド服に身を包んだ少女は、冒険者やギルド職員たちに囲まれていた。

「いや、僕の能力なんてそれほどでも……。それに、今の僕があるのは師匠のおかげなんですから」

 キリーはもみくちゃにされながらも、謙遜に振舞っている。

「もう、そんなに遠慮しなくてもいいのに~」

「まったくだ。今度は俺らと組んでくれねえか?」

「おい、どさくさに紛れて抜け駆けすんな! な、俺らとだろ、キリーちゃん」

「そこ、いやらしい目で見ないの。可愛いからってナンパするなんて最低よ!」

 冒険者たちは盛り上がっている。

 そこに、一人の女性が姿を現した。

「キリー、帰るよ」

「あっ、師匠。分かりました」

 黒いローブに身を包んだ妖麗な金髪の女性だった。その女性のそばに、キリーは笑顔で駆け寄った。

 その姿を見る冒険者やギルド職員たち。

「ヴァルラさん、キリーちゃんにあんな笑顔を向けてもらえて羨ましい」

「まったくだ。あの天使の笑みを向けられているのが、噂の魔女だっていうんだから世の中は分からん」

 そして、二人がギルドを出ていくまで、その姿を見送るのだった。


 これは、キリーと呼ばれる人物の物語。

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