極東幻鵺蒐 ~the Short Story of Dreamy East Night
幻滅極東社
夜櫻の咲く夏 ~Double Strange Dream
これはある精神科病院に入院していた患者の日記である。その患者はいつも夜になると音もなく消え、朝になると帰ってくる。その患者はいつも「
七月三十日
気づけば僕は見知らぬ神社に着いていた。何故そんなところに居たのかさっぱり分からない。どうもそこにたどり着くまでの記憶がないらしい。ふとすると、神社から多くの
何故僕は階段を登る前から上にあるのが神社だとわかったのだろう?
七月三十一日
昨日の櫻の神社にまた来ていた。意図的ではない、完全に無意識だ。僕は家で寝ていたはずなのだ。少し自分に
櫻の前に着くと昨日は上に囚われて気づいていなかったものに、今日は気がついた。櫻の元に少し掘り返した跡があった。この櫻を抜こうとしたのか?嘆かわしい。この櫻を抜こうなんて、どうやら人の心はこれ程までに荒んでしまったのか。少し現代人に
何故か僕の手は濡れていた。
八月三日
僕が勝手に外に出るから病院に入院することになった。入院するあたって面倒な事が増えた。それ故、最近日記を書けなかったではないか。そんなことも関係なく僕はまたあの神社にやって来ていた。勿論寝ている間に、だ。聞こえる囃子の音にも慣れてきた。櫻の前に来るとあることに気がついた。前よりも櫻に
遠くから囃子の音が聞こえた。
八月八日
櫻がまたしても
囃子の音が近くで聞こえる。もう少し櫻を見る時間が欲しいものだ。
ここから先の日記は、もう無い。患者は病院からは消えてしまったのだ。多くの人々がその患者を探し、櫻の
患者の居場所は誰も知らない。だが、たった一人、僕は知っている。
僕は毎日、その櫻を魅ていたのだから。
◆❖◇◇❖◆◆❖◇◇❖◆◆❖◇◇❖◆
───櫻は亡き息吹の桜より紅く───
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