真実を見る瑠璃の瞳

末千屋 コイメ

第1話

「できた! 今回も自信作!」

 私はイラストを描くことも、物語を書くことも大好きだ。いわゆる「絵文両刀」だと胸を張って言える。

 つぶやきにイラストを添付して、タグ付けて、投稿! こうすればすぐにいいねが来る。

 はずだったんだ。来ない。タイムラインが過疎ってる時に投稿しちゃったか? そうでもないように見える。他のフォロワーがイラストを投稿して数秒でいいねがつくのが見えた。共通フォロワーなのに、何で私にはいいねしないんだ! シェアもされてる! 私のも見えてるならしてくれよ。

 タイムラインにはイラストや小説があふれている。小説だと外部サイトで縦書き画像にしたやつを貼っている人が多い。

 別のフォロワーが、小説更新のお知らせを投稿した。

 しばらくタイムラインを眺めていたら、先ほどの小説更新のお知らせが、また別の共通フォロワーからシェアされて上がってきた。いいね件数とシェア件数に数字が表示される。

 「今回のお話も楽しかったです!特に宇宙くんが星ちゃんにあんな気持ちを抱いてたところが意外で好きです!次回も楽しみです!>シェア」と書かれた投稿がされていた。

 毎回更新の度に感想を投稿してる人だ。正直言って、私はこの話の何が面白いか理解できない。ファンタジーならもっと魔法を出せば良いんだ。リアリティが無いなら、ファンタジーに振り切ってしまえ。

「小説の感想はいつでもお気軽に。ただし、シェアしてからの空リプはやめてください。嫌いです」

 こうやって投稿しておけば、私にも小説の感想がくるはずだ。感想を送って良いかわからないと言う意見もよく見かけるし、これで私にも毎話感想が……。

 またフォロワーが何か投稿している。そのまま感想を投稿するのが恥ずかしいって人は、匿名ツールもご利用ください?

「私は過去に荒らされたので匿名ツールは二度と使いません」

 匿名だからって誹謗中傷して良いと思っているやつらもいる。感想の皮を被って叩いてくるやつもいる。だからもう匿名ツールは使わない。

 先ほど私が投稿したイラストには3件いいねがついていた。いつもいいねしてくれる仲の良いフォロワーだ。どんな投稿にもいいねはするけど、シェアはしない。どうせならシェアしてほしい。

 私と同じタイミングでイラストを投稿したフォロワーは、既に2桁のいいねとシェアがされていた。この人より私のほうが上手いと思うのに、どうしてだ?

 小説だって私のほうが良い作品を書けている自信がある。イラストも同じくらい自信がある。

 なのに、この人は有償依頼も貰えて、作品に感想も貰えて……。

 そんなことは後にして、イベントが近いからお品書きを出しておこう。久しぶりにオフで開催される都市のイベントだから、楽しみだ。やっぱりオンライン即売会よりオフのリアルイベントの空気を肌で感じたい。

 見本誌があれば買っていく人も増えるから、オンラインよりオフのほうが私には合っているんだ。

 新刊は刷り上がった。今回も表紙は自分で描いてある。絵文両刀だと一人で全てできるから良いな。

 頒布物が多いから新刊と準新刊だけのお品書き画像にして、残りはカタログチェックしてもらおう。さっさと在庫が動けば良い。本のサイズも時代の流れで変わってきたのかもしれない。大きめだと売れないな。

「きれいなものを紡いでいます。男女、男男、女女、いろんなカップリングあります。頒布物が多いのでカタログチェックおすすめです」

 こうやってアピールしておけば、カタログチェックするだろ。我ながら、気になるようにアピールできたと思う。

 タイムラインを眺める。「リクエストありがとうございます!」と投稿している人がいた。この人も私より下手だってのに。金額が安いから皆頼むんだな。

「私も有償依頼受付中です。きれいなものを描かせてください」

 コミッションサイトのアドレスとサンプルイラストも添付して投稿。

 いいねされた。またもやいつもいいねしてくるフォロワーだ。応援のつもりなら、シェアして拡散しろ。自己満足するな。

「いいねだけでなく拡散してくれると助かります」

 わざわざ書かせるなよ。まったく……。

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