第8話
「………ティアラローズさまはこのデスゲームをどう思っているのかしら?」
王女然としている彼女に、わたくしは意見を求めてみる。お守り役の中には成長を見守るという役目もあるため、コレは必要な問いかけだ。
「分かりません」
………正直なのは良いことよね。えぇ、そう。とーっても良いこと。
「じゃあもう1つ。デスゲームについて詳しく教えてくれないかしら?」
「詳しく、ですか………」
「えぇ、そうよ。詳しく教えなさい」
わたくしは震えて真っ青な彼女の肩を抱いて、安心させるように微笑んだ。
「うーん、たしか………、………なんらかの理由によって集められた登場人物たちが特定の場所に隔離もしくは幽閉され、指定された目的のために主催者から提示されたゲームに参加して、ゲームは1人または1チームといったごく少数の勝者と、残り大多数の敗者ができる仕組みとなっていて、勝利すると生存が保証され、巨大な報酬が得られることもある一方で、敗北すると死亡するか、もしくは重篤な後遺症や莫大な債務などを負うことになるっていうゲームのことだったと思います」
「分かったわ。ありがとう」
わたくしはティアラローズさまに微笑みかけてから、戦闘の繰り広げられている教室の中にパッと飛び出して、ライアンに向けて全力で走っていった。ライアンへ情報を渡すという大事な任務を持っているわたくしは、情報を頭の中で反芻しながら軽やかなステップを踏んで走るの。わたくしは始めて、学園指定の靴が編み上げ革ブーツであることに感謝した。ハイヒールで走れと言われるような状況に陥っていたら、わたくしは自分の靴を宙に思いっきり投げる自信がある。
「ライアン!!手短に話すわ。耳をかっぽじってよーくお聞きなさい!!」
「あぁ、分かった。リリーバード公爵令嬢!!1分稼げ!!」
「言われなくとも任されるわよっ!!」
ライアンが1度引いてわたくしの元に走ってきた。
「デスゲームというのは、簡単に言えば、死を伴う危険なゲームに巻き込まれること。そして、このゲームの終わりというのはゲームで勝つこと。敗北すれば、死亡するか、もしくは、重篤な後遺症などを負うことになるわ。つまり、この部屋の王侯貴族共の命運はわたくしたち3人にかかっているっていうわけよ。ライアン、行けるかしら?」
わたくしが挑発するように、冷や汗をいっぱいかいた首筋を隠しながら地位かけると、ライアンはふっと笑って見せた。清々しいくらいに美しい笑みは、いっそのこと女であるわたくしに嫉妬させるほどに整っている。
「当然だ。なんて言ったって、俺は完璧超人なディアの義弟にして婚約者なんだからな」
嫌味ったらしい義弟の言葉に、わたくしはにいっと笑って無詠唱で魔法を使う。
(《『
「おわっ、」
ライアンの真横を通過していった炎の魔法は、先生という名の敵を焼き尽くさんと轟々と燃え上がる。当然、教室に火がついて教師が燃え上がり始める。
「………クラウディアさまっ!!あなた教室を燃やすとは何事ですの!?もっとスマートに戦うことぐらいできませんの!?」
「………そうこう言える相手じゃないということは、レジーナさまもよくお分かりのはずですわよ!?さっさと教室を壊すくらいの気合いでじゃんじゃか魔法を放ったりして、先生の暴挙を止めてくださいまし!!」
わたくしとレジーナさまはギャーギャー言いながら、どんどん先生を追い詰めるために動いていく。レジーナさまはご自分の魔法属性を恥じているという噂通り、一切魔法を使おうとしない。
「………その程度か?公爵家のご令息にご令嬢方の実力は!!」
煽るような発言に、わたくしはすっと気持ちがないでいくのに気がつき、そしてやがて先生の違和感に気がついた。シャランと黒い王家の紋章に似た紋章のついたネックレスが胸元で揺れる。見慣れた紋章を気づかなかったことに自嘲しながらわたくしは笑う。だから、わたくしは武器を構えるのをやめ、そして先生の目の前まで丸腰で真っ直ぐ歩いた。
「なっ、ディア!!」
「クラウディアさま!?」
ライアンがわたくしに向かって無我夢中になって走ってこようとするのを魔法で押さえつけ、わたくしは武器を握って笑っている先生の前に堂々と立つ。
「クラウディア・ローズバード。筆頭公爵家の娘ですわ。自己紹介をどうもありがとう存じますわ。王家暗部所属の殺し屋、スバル先生」
「………ふっ、」
スバル先生は降参を表すかのように両手を上げて仄暗く笑った。
「よく見抜いたな。ローズバードのお嬢ちゃんよー。なんで分かったんだ?」
「………さあ?わたくしにも黙っている権利くらいあるのではないかしら?」
「そうだな」
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