廃仏建立
@Pz5
1. 1421(2001). バーミヤーン
かの偶像は破壊されねばならぬ――
慈悲深く慈愛遍きアッラーの御名において――
「偶像の類いをそれと知りつつアッラーと等し並に崇めたりしてはならぬぞ」
それが我等が預言者に授けられし天啓。
されどかの者共はイスラームを奉ずると嘯きかの地に作られし偶像を奉じておる。
まっこと
預言者や正統な三代のカリフから離れたシーア派のハザラ人共よ。カリフを僭称したその毒は深く入り込み、思想の頽廃を進め、遂にはかの異教の偶像を
いっかなシーア派とは云え、その様なクルアーンに反する悪しき
聖者信仰にも悖るまったき多神崇拝に堕落した異教徒共よ。
アッラーこそ真の光にして我らが理性を照らす太陽。
それすらも見失い、剰えアッラーの地位をかの偶像に譲るとは、ジャーヒリヤーに染まりし思想的堕落は愈々深い。
これも皆、共産主義無神論者共の侵攻から始まり、うち続いた戦乱の果てか。
私利私欲の為にキリスト教十字軍と妥協した北部同盟やムジャーヒディーンが齎した西欧無明無神論に毒された剽賊政治に因るものか。
孰れその道徳的堕落により
斯様に信仰者を騙りながら、その実西洋無神論思想のシャイターンに蕩かされ、無謬無窮のアッラーが示し賜うたイスラームを分断する者共の跋扈こそが、このアフガニスタンを1901年の王朝より絶え間なき戦乱へと誘い込んだのである。
これも皆、
されどアッラーは寛容にして慈悲深きお方。
離れて尚、悔い改め、今一度イスラームに戻れば御赦し下さり、平穏の道を示して下さる。
然ればこそ、壁龕の
その道理はここ、ムスリムを騙る悪しきビドアに取り憑かれた不信仰者共が醜い敵意を剥き出しにし、激しく抵抗したバーミヤーンにて納めた勝利も同様である。
然れば、かの偶像は破壊されねばならぬ――
破壊し、その穢れと毒を除き清めねばならぬ――
そも、異教徒の中でも経典の者は未だ救いがあろう。
されど、かの「仏教」とは、ムハンマド以前の預言者の授かりし教えに照らしても異質であり何とも異様である。
仏教とやらは「無」を志向した教えだと聞く。
「無」――?
「無」だと――?
眼前にある創造の御業を無視して「無」に至ろうとするとは、西欧無明無神論の物質主義者共をも超えた救い難き蒙昧。
そも、かの異教は神を頂かず「
アッラーこそ真理そのもの。
ただの人間がアッラーより賜る他に「真理を悟る」等、何たる無知にして何たる傲慢か。
それは「知識ではわが印を理解できなかったのに、それらを嘘であるとして信じな」いに等しい愚行。
因果応報と説くらしいが、アッラーこそ真の因果そのもの。
喇叭の吹かれるまさにその時、各々が為しし事その故に各々に応じて報われる。
アッラーこそ「善事を携えてくる者にはそれよりも善い物を与えられ」「悪事を携えてくる者には顔から先に火獄に投げ込まれ」る真正しき裁定者。
その上更に、神も人も、それも、善人も悪人も賢者も愚者も、それどころか家畜から畜生、砂や岩に至るまで、この世界の全ては皆等しいと説くと言う。
なんと愚かな事か――!
無機物と有機物が等しいと?
アッラーを畏れ、礼拝を欠かさず、クルアーンを読誦し、アッラーの定める掟に従い、ジハードに励む善人と、それを信じず享楽に堕落する無信仰者共が等しいと?
それどころか、理性を持たぬ畜獣と、それらを管理すべしとアッラーより命じられた理性ある人間が等しいと?
剰え、創造主にして絶対の真理たるアッラーと、理性に迷い、無明に捕われる事もある人間が等しいと?
おぞましい程の傲慢!
だのに、それを解すことすらできぬ単なる人間を偶像にまで仕立て上げ崇拝するとは、何と云う倒錯か。
その蒙昧こそ、正に無明。
現にその果てとして、かの王子の国は侵略され、滅び去ったではないか。
そんなおぞましい思想を生んだ土地もまた、デリー・スルターン、その後のムガールのジハードによってジャーヒリーヤからウンマに置換えられたではないか。
これぞ正しくアッラーの示し賜う因果。
この明確な因果が下されているにも関らず、彼等ハザラ族共はムスリムを名乗りながらあの偶像を壊しもせず、寧ろ日常的に崇拝していたと言う。
その毒が回り、我ら正きターリバーンが腐敗堕落した不信仰者からこの土地のウンマを恢復せんとしたのを理解できず、我らに銃を向けたその思想的頽廃は甚大である。
されど我らはアッラーがそうである様に、慈悲深く寛大である。
本来ならば生き残った者打ち首か、或はその腕を切り落とすのが道理だが、人差し指を切り落とすだけで赦し、さらには彼等に改心の機会を与えよう。
その堕落の源、あの偶像の打ち壊しを手伝い、その道徳心を蝕む毒を共に浄める好機を与えよう。
さあ、各々手に手にダイナマイトを持ち、仕掛け、或は成形爆薬弾やロケットランチャーを携え、かの偶像を破壊するのだ。
ジャーヒリーヤを打ち払い、ジハードを示すのだ。
その為にも――
かの偶像は破壊されねばならぬ――
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