この世界と人間に絶望した少女は異世界で魔物を束ねる(仮)
Catherine Gonzalez
第1話 prologue1
一瞬の浮遊感。漫画やアニメを見る限り、もっと長いものかと思っていたけれど案外体感時間は短いみたいだ。恐怖を感じる間もなかった。
なにか硬いものが折れる音と、なにか軟らかいものが潰れる音が体の外と中から同時に聞こえた気がした。熱いな、暑いな。あ、でも今日は最低気温が10℃切ってたから寒いのか。
少し、離れたところから人の声が聞こえる。なんて言っているのかわからなかったけれど。それにしても熱いな。汗かいてる気がする。瞬きをしようと思ったけれど、瞼が動かなかった。変だな。わたしも、みんなも。
焼けるような熱さの中、わたしはこの十数年間の回想を始めた。
物心ついた時から、わたしは自分と他人が違うことをそれとなく察していた。わたしができることを、大抵の人は苦労して苦労して結局できなくて。自分だけ、他の生き物みたいで怖かった。
でもそれも、小学校も高学年になれば上手く処理できるようになった。大事なところ以外ではいい塩梅で手を抜く。たまにはうっかりミスも忘れずに。常に明るく、周りに優しく。
こうして、わたしは「ちょっと天然で優しいお利口さん」の地位を手に入れた。誰も、彼も、わたしを疑わなかった。わたしのコトを信頼していたから?違う。誰もわたしのコトを見ていなかったんだ。それでもよかった。みんなと同じささやかな「シアワセ」が貰えるなら。
いつから間違っていたんだろう。いつから歯車が狂い始めたのだろう。高校に入学してからかもしれない。中学校にに入学してからかもしれない。もしかしたら、最初からかもしれない。わたしはいつの間にか浮いていた。集団から浮いていた。まるで、わたしがストーリーテラーにでもなってしまってみんながキャラクターになってしまったかのような違和感。なんだろう。これは。「今日の小テスト超怠くね?」こんな会話を、みんなと普通に、そう普通にしたかっただけなのに。辛かった。理由が分からなかった。はじめ、僅かであったズレは日を追うごとに広がっていった。周りの人達を信じられなくなった。毎日が憂鬱だった。
ある時、そんな息が詰まるような日々に小さな変化があった。同じクラスのある男子生徒に恋愛感情を抱くようになったのだ。特にきらりと光る才能やなんかがあるわけではなかったし、特別に理想的な人格と言うわけでもなかった。でも、自分とは違うものを持った人間にわたしはどんどん惹かれていった。
そして三日前、わたしはついに自分の気持ちを自分の言葉で彼に向けて発信した。精一杯の気持ちを込めて、彼に届きますようにと心から願った。記憶にある中で、初めて自分に誠実に行動した。彼の返事は、素っ気なかった。
「
そんなこと言わないで。貴方はわたしにとって誰よりも素敵なひとなの。でも、貴方にそういう気持ちがないならわたしも潔くこの気持ちを捨てられるわ。今日はありがとう。
どこまでも謙虚で優しい人だと思った。わたしは、そう言って夕暮れの教室を後にしようとした。
なのに。
「君と僕じゃ、住む世界が違うんだ。こんなこと言っちゃ悪いけど、宇治原さんは何でもできていいよね。みんなにも好かれてさ。クラスの人気者で」
耳が、頭が。痛かった。
「それに対して僕はさぁ。ぜーんぶそこそこで普通でなんも凄いところないし。それとも何なの?僕を自分の引き立て役にしたかったのか?いい迷惑だよ。そんなの御免だ」
違う。違うんだよ。そう叫びたかった。
でも、大切な人の口から、大切な人の声で放たれた言葉の矢はわたしの心臓を深く抉っただけで。
「やっぱりどんなに表を良い人風に取り繕ったって結局は人間そんなものだよね。強欲で、嫉妬深くて、醜くてさ。僕も、君も」
わたしの目は、目の前の何も映していなかった。ただ、異国の砂漠のように乾ききっていた。
ああぁ、もう何も考えられないや。人間は、強欲で、嫉妬深くて、醜い。
「……さようなら、
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