異世界交流ゲームセンター
ミンイチ
第1話
この地域のある場所には廃ゲームセンターがある。
壁には大量のスプレーの落書きがあり、ゴミも散らばっているため、地域の不良の溜まり場となっていると思われるかもしれない。
しかし、このゲームセンターはそんな存在に成り下がっているわけではない。
このゲームセンターに光が灯るのは毎週土曜日の夜10時からだ。
その週の管理を任せられている何人かの地域の住民が施設の電源を入れ、設備の点検をし始める。
10時半にもなるとほぼすべての設備の点検が終わり、他の人が集まりだす。
それぞれの人が何かしらの品物を持ち込み、露天のようにそれらを置いていく。
11時の10分前から子供用のビニールプールとそこに入れるための水、そしてそのビニールプールの中に入れる子ガニを運び込み始める。
そして、それぞれの人がその子ガニを入れるための籠を持ってきている。
11時になった。
リズムゲー厶エリアにいくつかある大きなスクリーンの映像がいきなり変わり、その中から不思議な人たちが現れた。
その人たちは物語に出てくるような「エルフ」や「獣人」といった人もいれば、普通に見える人もいる。
そして、出てくるのと同時にこちらの人たちもカニを持ってそのスクリーンの中に入っていく。
こちらに来た人たちは金を使い、こちらの人が用意したものを買い、お釣りの代わりにカニを渡す。
逆に、あちらに行った人たちはあちらの人が用意したものをカニで買い、お釣りの代わりに金を渡す。
この交流は昨年から行われている。
あちらの世界ではカニはおらず、あちらの環境では育てることすらもできないらしい。
しかし、あちらの世界の人々の中ではカニを食べたいという気持ちが大きくなっている。
そして、あちらの世界の金は、こちらの世界でのカニと同じくらいの価値を持つ。
そのようなことにより交渉が行われ、この交流が始まった。
12時になる5分前にはそれぞれの世界に行っていた人が元の世界に戻り、行き来するための"扉"の前に集い、別れの挨拶をする。
12時になると同時に、スクリーンは元の画面に戻る。
そのあとは後片付けを始める。
品物を持ってきた人はそれを片付け、あちらの世界で物を買ってきた人は、欲しい人に金と交換する。
それが終わると、余ったカニを集めてそれを育成係の人に渡す。
1時から2時までに後片付けが全てを終わらせて、次の週の係の人が機器の点検をして電気を消す。
そしてゲームセンターは次の土曜日まで静かに佇む。
異世界交流ゲームセンター ミンイチ @DoTK
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