特別急行列車「へいわ」号の派遣社員

与方藤士朗

プロローグ ~ヒーローの、3度目の出番

第1話 ヒーローの出番です! キハ82系の登場

 去る1961(昭和36)年10月の国鉄白紙ダイヤ改正。

 人呼んで「サンロクトウ」と呼ばれたこのダイヤ改正で設定された特別急行「へいわ」号は、大阪から広島までを破格の4時間40分で結ぶ。

 下りは大阪を18時に出発、広島には22時40分到着。上りは広島を朝7時30分に出て、大阪には12時10分に着くダイヤで設定されている。

 途中の停車駅は、上下とも三ノ宮、姫路、岡山、福山、尾道、三原の各駅。関西圏より西に向かう特急列車なので、神戸には停車せず、これまでの「かもめ」と同様三ノ宮停車。その代わり広島県内に入ったら東部の3駅に、ややこまめに停車する。


 要はこの列車、東京からの電車特急との乗継とともに、広島近辺からの大阪への日帰りの需要を見込んだものでもあった。同時に、3年後の新幹線開業後の山陽本線特急網を整備するための意味合いも持ち合わせて、この列車は設定されたのである。

 この列車「へいわ」号は、新型気動車80系82型(以下単に「82系」)によって編成されている。

 10両以上が当たり前の当時の特別急行列車としては短編成であった。もっとも、82系気動車特急は途中での分割併合をするため、併せて12両、最大で14両になることも見越しており、そのため6ないし7両の基本編成をこのように設定されて各地に飛び出していった次第である。

 なお、キロは当時の一等車(現在のグリーン車)、キシは食堂車。

 そしてキハは現在の普通車にあたる、当時の二等車である。


 キハ キロ キシ キハ キハ キハ


 これが、かの白紙改正で全国津々浦々に特別急行列車網を構築すべく投入された82系気動車の6両基本編成である。超大編成の多かった客車列車の中で、たった6両の気動車特急は、今や色も装いも鮮やかに、全国の都市から都市を結んでいる。

 この82系特急はどれも軒並み人気も高く、程なく中間車の「キハ」が食堂車の後ろ側に1両追加された。

 これは、食堂車前の一等車の通り抜けを極力減らすための措置であった。

 

・・・ ・・・ ・・・・・・・


 この物語は、大阪市内のある会社の社長室から始まる。

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