第7話 かわいこちゃんとダンジョンだ
「すごいな……」
目の前で大型モンスターが白い狼の召喚モンスター、フェンリルに八つ裂きにされてるのをみながら俺は感嘆の声を上げる。
ギルドでリーンの願いを聞いて俺は彼女と言い所にダンジョンへと来ていた。
彼女はS級冒険者で召喚士のリーン。
モンスターを召喚して戦わせる万能型の職業だ。
彼女が召喚したフェンリルは縦横無尽に駆け回りダンジョンに入ってからずっと襲い来るモンスターを軒並み瞬殺していた。
「……俺、ついてくる必要あったのかな?」
俺は後ろを歩いてついてくるリーンにそう問いかけた。
「え、あ、あ、は、はい。実はケントさんだからお願いしたんです」
彼女はワタワタと慌てながら答えた。
「……理由がわからないな。今の所君とフェンリルだけで事が足りそうだが?」
「け、ケントさんは回復術師ですよね?わ、私たち人間は【自動守護】で守られてますが、私のラナフェル……フェンリルには【自動守護】がありません」
なるほど。俺は合点がいく。
召喚モンスターが傷ついた場合、俺の回復スキルが役立つのか。
「そ、それに……」
「それに?」
彼女はモンスター相手に暴れ回るフェンリルに優しい目をフェンリルに向けながら
「なんだかあの子、とても元気で嬉しそうなんです。あんなに嬉しそうなのは初めて」
彼女がそう言い終わるとこの場のモンスターを駆逐したフェンリル、ラナフェルがワォォォンと吠えた。
「なんだかケントさん一緒にいるのが楽しそう」
そう言われて俺は自分のスキル【魔物操術】を思い出した。
モンスターテイムはモンスターを使役するだけでなく能力を向上させる効果もあるようだった。それはパーティ内にも影響するのだろう。
俺たちは順調に先へ進み、このダンジョンの禁忌の門と呼ばれる場所の前までたどり着く。
本来ならこの門は開くことができないのだが、召喚士であるリーンがいれば門の奥へと入る事ができる。
召喚士専用の空間であり、ここにいるベヒーモスバーストを倒す事でその力を得る事ができるのだ。
それは召喚士としての頂点と言ってもいい、らしい。
だが、ここにくるメリットが他の冒険者にはなく、大金を払っても引き受けてくれる冒険者は少ない。リーンのパーティメンバーですら付き合ってくれなかったそうだ。
メンバー集めを諦めかけてた時、ギルドで俺を見つけたのだそうだ。
回復術師に拘る荷物持ち、俺は結構S級の冒険者の間では有名だったらしい。
笑いと悪い意味で。
だが、リーンとしては唯一少人数でベヒーモスと渡り合える数少ない候補者だったと言うわけだ。
俺たちは門の前で小休止を取る。
一旦フェンリル・ラナフェルの召喚を解除しようとしたリーンを止めて
フェンリルに近づきおとなしく座っている狼の頭を撫でながら
【完全回復】のスキルを使う。
すると小さな擦り傷や爪の痛みなどがスッと消えていく。
「すごい、ありがとうございます。」
リーンはフェンリルに抱きついて喜ぶ。
ラナフェルもも優しい眼差しを俺に向けクゥーーンと鼻を摺り寄せてくる。俺はラナフェルの頭を撫でてやりながら
「一旦召喚を解除しよう。君の魔力を少しでも回復するべきだ」
俺は疲れを見せぬように振る舞っているリーンにそう声をかける。
そんな俺の言葉に彼女は察したのかこくりと頷きラナフェルの召喚を一旦解除した。
光の粒子となってラナフェルは名残惜しそうに消えていく。
それを見届けたリーンに
「少し休んでくれ。2時間後門の向こうへ突撃する」
俺の言葉に彼女は緊張した顔で頷いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます